研究課題/領域番号 |
15K00064
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研究機関 | 統計数理研究所 |
研究代表者 |
逸見 昌之 統計数理研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (80465921)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 推定関数 / 捩れを許す統計多様体 / セミパラメトリックモデル |
研究実績の概要 |
確率密度関数の集合を多様体と見なし、その上で統計的推論の(微分)幾何学的な構造を論じることから始まった情報幾何学は、これまで情報理論・最適化・機械学習などの関連諸分野にも影響を及ぼしながら発展してきたが、本研究では、これまで行ってきた共同研究を背景としながら、情報幾何学の統計科学における役割を促進させることを目的としている。データに対しあるパラメトリックな統計モデルを設定したとき、データから未知の(真の)パラメータを推定するために、必ずしも最尤法(スコア関数)とは限らない推定関数を用いる場合がある。本年度は主に、この推定関数から統計モデルに誘導される「捩れを許す統計多様体」と呼ばれる微分幾何的な構造について考察した。特に、推定関数がパラメータに関して可積分でない場合には、誘導される幾何構造であるリーマン計量と2つの双対アファイン接続のうち、一方のアファイン接続には実際に捩れが生じるが、このとき曲率がゼロであっても、統計モデルはいわゆる双対平坦にはならない。しかしながら、双対平坦空間と同様に測地線に関する射影定理などは成立し、具体的な統計的問題に現れる推定関数を扱いながら、そのような性質の統計的意味を探ったが、まだ明らかにはなっていない。この問題については、次年度の課題とともに継続して考えていく予定である。また本年度は、セミパラメトリック推測の情報幾何と関連して、欠測データに対するセミパラメトリックな解析法についての招待講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は主に、推定関数から誘導される「捩れを許す統計多様体」、特に推定関数がパラメータに関して非可積分で、アファイン接続に実際に捩れが生じ、かつ曲率がゼロとなる場場合に焦点を当てて、その統計的意味について考察したが、明らかにするところまでには至らなかった。その理由としては、問題そのものが想定していた以上に難しいということもあるが、連携研究者等との議論も十分に行えなかった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(28年度)は引き続き、推定関数から誘導される幾何構造の問題も考えていくが、予定していた課題、すなわち、変形指数型分布族における幾何構造と一般化された独立性の下での疑似的な最尤推定法の研究に焦点を当てる。研究を遂行していくために、連携研究者や関連する研究者との議論も積極的に行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
「次年度使用額」が生じた主な理由は、体調不良により、予定していた2回分の海外出張が行えなかったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、本研究課題に関連する国内外の研究集会に参加し、情報収集と研究発表を行う予定である。また、連携研究者や関連する研究者と議論するための旅費としても使用し、コンピュータや関連書籍の購入などにも使用することを考えている。さらに、本研究の遂行のため、短期間、若手研究者を雇用することも予定している。
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