研究課題/領域番号 |
15K00066
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
藤田 直行 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 主幹研究員 (70358480)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 障害検出 / 原因特定 / 障害予測 / ビッグデータ |
研究実績の概要 |
一般に,コンピュータシステムには,障害の検出,通知,障害原因の特定などの機能を備えた管理ツールが組み込まれているが,障害の検出は,障害が起きた後に有効になるものであるため,事前に対応策を打つことは困難である.そこで,本研究では,ネットワーク,サーバ群などの重要かつ大規模なシステムを対象に,ハードウェア内部の物理的現象,システムから抽出できるログ情報,およびシステムを取り巻く物理的環境の状態を捉えた外部的な情報の3つを網羅的に収集し精査することによって,ハードウェア障害が起こる前の予兆を捉え,ハードウェア障害を事前に予測することを目的とする. 本研究においては,内部状態情報,内部物理情報,外部物理情報の3つの要素からデータを収集するため,初年度は必要な機器の整備を実施した.すなわち,高周波用アンテナや高周波解析用のスペクトラムアナライザなどの内部物理情報測定機器を設置し,気温,湿度計などの外部物理情報収集に必要な機器を解析用PCに繋ぐことでデータ収集に必要な測定環境を整備した.また,整備した測定環境で実際の測定を試行し,測定内容の確認やセンサー設置に関する調整や検討を行った. 整備した測定環境で得られたデータを,高周波,低周波および使用CPU数,メモリなどの大量のデータを収集・保持するプロファイリングツールを構築するための準備を開始した.具体的には,データ自動収集プログラムの作成,観測自動化のためのプログラムの作成などを実施することによって,大量のデータを自動的に収集,保持するシステムを構築するための設計とプロトタイピングを実施した.また,プロファイリングツールにはsyslog解析のための処理プログラムも組み込むことで,内部,外部物理情報 ,内部状態情報の3つの情報を一箇所にまとめて一括で管理し,解析することを可能とする設計とした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、実験環境の整備、プロファイリングツールの構築を行う計画であり、概ね順調に進展している。実験環境の整備においては、測定ノイズの低減に時間を要したが、測定信号を有意に検出できる目途がついた。 具体的には、データ収集や分析を行うための計算機、スペクトラムアナライザ、アンテナスイッチなどの実験環境インフラ用の機器の調達、セットアップおよび調整を実施した。 またアンテナに関しては、ベースクロックに共振するよう設計する一方で 広帯域における受信データの有意性を評価し、受信感度を上げるよういくつかの試作を行った。この試作によるプロトタイプの感度は概ね良好で、これにより今後の実験の実施が円滑に行われることが期待できる。したがって、ここまでの進捗状況は概ね計画に即していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
測定データに関して、(1)扱う変数の種類、(2)変数間の関係と変数の絞り込み、(3)予測のための手法が課題となっている。(1)は、観測データを数値データとして扱うべきか、またはカテゴリデータとして扱うべきか、といった変数処理の検討、(2)は、相関係数・主成分分析・共分散構造分析等を用いて影響の小さい変数を取り除くことに対する検討、(3)は、ロジスティック回帰分析ないしは他の手法を用いて、二つのグループを分離する境界線を求めるための回帰式を導き、予測へ繋げることを検討している。 また、モデル作成や変数選別等に対して効率的に検討が進められるよう、テストケースの作成を行う。また、プロファイリングツールを完成させると共に、異常データ判別ツールへの拡張を検討し、これらの活動を障害予測モデル構築の足掛かりとする。
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