本年度は研究計画に従い,以下の2つの研究テーマを遂行しながら,利用者がどこにいても利用可能な即時的で利便性の高い並列処理環境を実現する「機動的並列処理方式」の研究開発を行った. テーマ1:モバイルコンピュータ分野向けのプロセッサのための高性能バイナリ変換技術の開発を継続して行った.オープンソースの最適化コンパイラフレームワークである LLVMをベースにして,モバイル分野の事実上の標準であるARMプロセッサの機械命令プログラムを入力して,LLVMの内部中間表現に変換するフロントエンド部の開発を行っているが、今年度は,昨年度の開発したフロントエンドの機能を拡張し,変換可能な命令や制御構造の拡充を行った.これにより,LLVMの最適化/並列化処理機能を用いて,機械語レベルで直接的に最適化/並列化できるプログラムの範囲が広がることとなる。また,機械語レベルでの最適化/並列化処理を柔軟に行うために,LLVMの中間表現レベルで並列化指示文を記述できる拡張を行い,実装を行った.これにより,中間表現レベルでの並列化処理を通じて,並列実行可能な機械語プログラムの自動生成機能を実現した. テーマ2:MPI並列プログラムの各並列プロセスの負荷分散技術の開発を継続して行った.今年度はMPIプログラムにおける並列プロセス間でのメッセージ通信の転送データ量を計測し,ノード間での通信量が最小となるようなプロセスの配置を決定する手法について検討を行った.また,その検討の基礎となるデータとして,NPBや姫野ベンチマーク,HPLなどのMPI並列プログラムを実行した際のプロファイルデータを取得した.
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