研究課題/領域番号 |
15K00073
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
田中 清史 北陸先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 准教授 (20333445)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | リアルタイムシステム / リアルタイムスケジューリング / スケジューラビリティ / 応答時間 / ジッタ |
研究実績の概要 |
本研究は目的の異なる多数の重要度の異なるタスク群からなるリアルタイム組込みシステムにおいて,従来の理論では理想化されていた動的要因である「タスクの実行時間の変動」,「タスクの非同期的起動・終了」,および「スケジューリングオーバヘッド」を導入したリアルタイムスケジューリングの定式化,スケジューラビリティ解析,および実用化方式を提案・評価することを目的としている.これにより,今後の複雑化・多様化する組込みアプリケーションタスク群の異なるリアルタイム性要求に対し,最適なスケジューリングアルゴリズムの選択を可能とする.動的要因の利用により,従来の理論モデル上でのリアルタイム性能を超える実用化方式を実証することが革新的である. 27年度は主に,(1)動的要因を導入した拡張モデルの定義,(2)各調査対象アルゴリズムの動的要因を導入したスケジューラビリティ解析の定式化,および(3)拡張モデル上での,動的要因に確率分布を使用した場合のアルゴリズムの評価を行う計画を立て,研究を進めた.上記(1)において,「タスクの実行時間の変動」,「システムティックと非同期的なタスクの起動・中断・終了」,および「OSのオーバヘッド」の3つの動的要因を導入して,従来のタスク実行モデルを拡張したモデルを定義した.これについては,国際会議2件,国内会議1件の発表を行った.(2)に関して,固定優先度リアルタイムスケジューリングを前提としたシステムを対象とし,動的要因を含んだモデルに対するスケジューラビリティの十分条件式を確立し,国際会議2件,国内会議1件において提案した.同じく,(3)に関して,動的要因に対して確率分布(指数分布および正規分布)を使用して多数のタスクセットを生成し,シミュレーションによってリアルタイム性能を評価し,国際会議,国内会議にて発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究実績の概要】で記述した通り,研究開始時に27年度の研究実施計画として挙げた3項目を全て達成した.項目(1),(2)を遂行する過程で,提案したスケジューラビリティの保証方式において,OSオーバヘッドが見積りよりも小さくなる場合に,保証メカニズムををアプリケーションのリアルタイム性能の向上に役立てる方式を考案し,これを提案・評価し,国内会議で発表した.これに加え,リアルタイム性能を更に向上させるために,組込みアプリケーションにおいてタスクの実行時間を予測する方式を提案し,これを実際のスケジューリングアルゴリズムと統合して評価した内容を国内会議2件において発表した.また,リアルタイムシステムのアプリケーション適応性の一貫として,FPGAを対象としてシステム自動最適化を達成する方式を提案・評価し,国内会議3件で発表した.更に,独自のスケジューリングアルゴリズムを拡張し,評価した内容を国際会議1件,国際雑誌2件で発表した.以上から,当初の計画を達成した上で付加的な成果が得られているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,2年目で(4)シミュレーション環境の構築,(5)実行バイナリのシミュレーションによる評価,(6)統計情報のスケジューラビリティ解析方法へのフィードバックと実用性の評価,および(7)動的要因を利用するアルゴリズムの確立・実装を行う. 実際のシステムの実行状況を反映する評価を行うために,アプリケーションバイナリをターゲットとするシミュレーションを行う.このために,(4)においてシミュレーション環境を構築する.続いて(5)において,実アプリケーションを使用したシミュレーション評価を行う.続いて(6)において,(5)で得られた統計情報を平成27年度で確立したスケジューラビリティ解析方法に反映させる.(7)において,実行時間の変動等の動的要因を考慮し,それを利用するアルゴリズムを確立し,実装する. 3年目では(8)提案アルゴリズムと既存アルゴリズムの性能比較評価を総合的に行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
謝金を予定していた学生について,学業との兼ね合いから本研究に費やす時間をやや削減したため,17,787円の金額が残った.
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次年度使用額の使用計画 |
謝金として使用することにより,本研究遂行をより進めることを計画する.
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