研究課題/領域番号 |
15K00076
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
平田 博章 京都工芸繊維大学, 情報工学・人間科学系, 准教授 (90273549)
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研究分担者 |
布目 淳 京都工芸繊維大学, 情報工学・人間科学系, 助教 (60335320)
柴山 潔 京都情報大学院大学, その他の研究科, 教授 (70127091)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | 計算機システム / ハイパフォーマンス・コンピューティング / 投機実行 / スレッドレベル並列処理 / メモリシステム |
研究実績の概要 |
本研究は、スレッドレベルの並列投機実行方式に関してスレッド間の依存関係を除去する研究と、高速なトランザクショナルメモリ(以下、TM)を実現する研究とから着想した発展的な研究である。「投機実行中のスレッドが依存関係によるハザードの発生を予想してサスペンド(状態を一時保存して後に実行を再開)する」ことを可能にすることで、従来の限界を超えて多くの並列性をプログラムから引き出す技術を確立することを目的とする。そのために、従来のTMに明示的な投機実行とその順序関係を指定する機能を追加した順序付きTMを新たに開発する。実現方式としてソフトウェア機能も活用して投機実行を制御する点で独創性が高く、また、データベース処理のハードウェア支援方式と捉えれば、より広い学術領域に変革をもたらす点で意義も大きい。 本年度は、「順序付きTM」を実現する具体的なメモリシステム「投機メモリ」(以下、SM)の仕様を策定し、これをプログラムから使用するためのマルチスレッドライブラリを開発した。スレッドが投機実行中かどうかを本ライブラリ内で管理し、スレッドのアボートや再実行などの制御も本ライブラリで行う。投機実行中のスレッドであってもOSからは通常のスレッドとして認識されるので、投機実行中の状態のままそのスレッドをサスペンドすること(従って、他の投機スレッドを実行すること)を可能とした。開発の過程において機能テストの目的で使用した単純なアプリケーションに対して、ソフトウェアのみでも性能向上が可能であることが確認できた。また、さらに性能向上を達成するための課題や、ハードウェアベースのシステム設計に有用な知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画の採択が平成27年秋であり、それからの研究計画の実施であっため、当初の進捗は時間的にやや遅れぎみであったが、平成28年度末の時点では、ほぼ計画通りの進捗状況に追いついている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画の最終年度である平成29年度は、平成28年度に得られた知見を基にして、「順序付きTM」の概念を実現する具体的なメモリシステムであるSMを完成し、性能評価を行うことによって、本研究で提案する「順序付きTM」の概念及びSMシステムの有効性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
発表予定の学会のスケジュール変更(投稿締め切りなど)に伴い、年度内に使い切ることができない事情が生じたことと、購入予定物品の発売に際して製品の不具合が多数報告されていたことから、その購入時期を遅らせたことに起因する。ただし、これらは研究のメインストリームとは直接の関係はないため、研究自体の進捗に影響はない。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度初頭に、平成29年度予算の一部と合わせて使用(実施)する。
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