研究課題/領域番号 |
15K00081
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
井上 智生 広島市立大学, 情報科学研究科, 教授 (40252829)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | サイバーフィジカルシステム / ディペンダビリティ / 高信頼化設計 / 耐故障設計 / 時間制約 / リアルタイム性 / 高位合成 / 組込みLSI |
研究実績の概要 |
本研究は、サイバーフィジカルシステム (CPS) を構成する組込みLSIの高信頼化を実現するための設計技術の開発を目指すものである。CPSでは、これまでの組込みシステムとは異なり、大量の情報を厳しいリアルタイム制約下で処理することが求められる。本研究ではこのような特徴を持つCPSの動作モデルの構築、耐故障・誤り許容性の定義、そしてそれらを踏まえたLSI動作合成システムの提案・開発を目指している。 平成27年度は、高信頼化設計を実現するために必要な情報を持つCPSの動作モデルの提案とそれに基づくCPSの実装例の構築を主眼に置き、研究を行った。その具体的な成果としては主に次の2つが挙げられる。 1.CPS動作モデルの構築。サイバー空間、フィジカル空間、及びそれぞれを構成する機能を階層的に Hybrid-Timed Automaton で記述し、それらをつなぐ全体の流れをブロック図で記述する方法を提案し、システム全体としての(特に、サイバー空間の)時間制約を表現可能とした。これにより、構成機能の時間冗長設計の探索が可能となり、空間(ハードウェアリソース)とのトレードオフが探究可能となる。 2.実装例の構築。上述のモデルの有効性を実証するために、CPSシステムの簡易版を実機で実装した。具体的には、模型自動車による自動追従システムを作成した。上述のモデルで本システムを記述し、個々の機能ユニットの遅延を擬似的に増大させることで、故障によるシステムの遅延をシミュレートし、時間制約違反がシステム全体の動作に及ぼす影響を実機レベルで検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前述のとおり、大きな視点では当初計画どおりの研究成果を得たが、細かい点ではいくつか未達成の点がある。具体的には次のとおりである。 1.不可逆性のモデル化。誤り検出・訂正機能を低ハードウェアコストで実現するためには、ロールバックを含む再計算の手法があるが、CPSの処理フローには再計算が許されない(不可逆な)処理も存在する。適切な耐故障性を実現するためには、このような不可逆性をモデルで表現する必要があるが、今年度は検討が十分にできず、未完成の状態である。 2.モデル適用事例。提案したモデルの適用例として、種々のCPSを対象とする予定であったが、自動追従システムのような一部のモデル化にとどまってしまった。これは前述1のモデル化の遅れにもつながっている。 一方で、次年度(平成28年度)に計画していた研究課題の一つである「誤り許容性」に関する考察を一部先行して進めることができた。具体的には、センサからの取得データの補正のための処理における精度と処理時間とのトレードオフを考察した。
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今後の研究の推進方策 |
前述の研究進捗の遅れを平成28年度中に取り戻し、全体として当初計画にあうようにする。実機による実験・モデル検証を行うために、実験補助者の雇用を増強する。 一方で、すでに次年度の計画にある課題の考察に取り組んでいることから、次年度の計画にある課題にあわせて取り組むことで、大きな研究計画の変更なく、次年度の目標を達成できると見込んでいる。
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次年度使用額が生じた理由 |
情報収集のための国際会議参加を当初予定していたが、本研究課題に特に関連性の高い特別セッション・企画セッションを含む国際会議が平成28年度4月に開催されることがわかり、より効果の高い情報収集を行うためにその旅費等を繰り越した。 また、上述のとおり、一部モデル化の遅れにより、それに伴う実験が遅れたため、実験機器の購入、並びに、実験補助に対する費用が繰り越された。
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次年度使用額の使用計画 |
国際会議の参加にかかる旅費、参加費等で次年度4月に執行する。 次年度の早い時期に実験を行うために予算を執行する計画である。
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