研究課題/領域番号 |
15K00084
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
横山 孝典 東京都市大学, 知識工学部, 教授 (60386357)
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研究分担者 |
兪 明連 東京都市大学, 知識工学部, 准教授 (80451384)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 組み込みシステム / リアルタイムシステム / サイバーフィジカルシステム / 分散処理 / オペレーティングシステム |
研究実績の概要 |
本研究では、有線ネットワークと無線ネットワークが混在したヘテロジニアスな分散型組み込み制御システムにおいて、複数の組み込みコンピュータが高精度に同期して処理を実行できる分散処理環境を実現するため、1.「分散リアルタイムOSファミリ」と 2.「ソフトウェア開発環境」を開発する。 平成28年度は計画通り、1.「分散リアルタイムOSファミリ」については、(1)分散RTOSにおける時刻同期機構および無線通信機能の詳細設計、(2)分散RTOSのファミリ化を実現するアスペクトの設計、(3)分散RTOSファミリのコンフィギュレーションツールの設計、2.「ソフトウェア開発環境」については、(4)分散処理対応モデル変換ツールの設計、(5)リアルタイム設計・検証ツールの設計、(6)スケジューリングアルゴリズムの検討を行った。 具体的には、(1)については、GPSモジュールから時刻信号を用いてRTOSのシステム時刻をUTC(協定世界時)に同期させる機構を実装し、評価を行った。また、タイムスタンプを付加したメッセージを用いた分散ミドルウェアを設計し、無線通信による実装に着手した。(2)については、スケジューリングアルゴリズムをカスタマイズするアスペクトの実装および評価を行うとともに、並列処理機能や分散処理機能のアスペクトの設計を行った。(3)については、パーサジェネレータとアスペクト指向を用いてファミリを構成する各RTOS向けのコンフィギュレーションツールの設計を行った。また、(4)についてはタスクを含むモデルを扱えるようにするための拡張を行った。(5)については、マルチコアプロセッサにおけるデータ整合性の検証を可能とする検証ツールの設計を行った。(6)については、マルチプロセッサ環境を中心にスケジューリングアルゴリズムの検討を行った。そしてそれらの成果を論文誌、国際会議、研究会等にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、平成27年度の成果をもとに詳細設計を進めることとし、1.「分散リアルタイムOSファミリ」については、(1)分散RTOSにおける時刻同期機構および無線通信機能の詳細設計、(2)分散RTOSのファミリ化を実現するアスペクトの設計、(3)分散RTOSファミリのコンフィギュレーションツールの設計、2.「ソフトウェア開発環境」については、(4)分散処理対応モデル変換ツールの設計、(5)リアルタイム設計・検証ツールの設計、(6)スケジューリングアルゴリズムの提案を行うことを計画していた。 (1)については、時刻同期機構は計画より進んで実装及び評価まで行ったが、無線通信については詳細設計中で進捗はやや遅れ気味である。(2)については効率のよいアスペクト記述法を提案し、それを用いた実装まで行ったので、計画よりやや進んでいる。(3)についてはパーサジェネレータとアスペクト指向を用いた効率的なコンフィギュレーションツールの設計を完了しており、順調である。(4)もタスク情報を含むモデルを生成できるモデル変換ツールを設計しており、順調である。(5)は実装に向けた取り組みがやや遅れているが、ほぼ計画通りである。(6)もアルゴリズムの検討及び提案を行い、ほぼ順調である。 以上のように、いくつかの項目で若干遅れが見られるものの、計画以上に進んでいる項目もあることから、全体としてはおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの2年間の成果をもとに実装を進め、開発成果物を統合化するとともにその評価を行い、1.「分散リアルタイムOSファミリ」と 2.「ソフトウェア開発環境」の開発を完了する。 まず、1.「分散リアルタイムOSファミリ」について以下の実装および評価を行う。(1)については、時刻同期機構及び無線通信機能を搭載した分散リアルタイムOSを評価ボード上に実装し、性能を評価する。(2)については、これまでに提案したアスペクトを用いて、分散リアルタイムOSファミリを構成するOSメンバを実装し、実用上問題のない性能が得られているか評価する。(3)については、分散リアルタイムOSファミリの各OSメンバに対応したコンフィギュレーションツールを実装し、その実用性を評価する。 また、2.「ソフトウェア開発環境」について以下の実装および評価を行う。(4)については、分散処理対応モデル変換ツールの実装を完了し、広範囲のアプリケーションに適用可能であるか評価する。(5)については、リアルタイム設計・検証ツールの実装を完了し、実際のアプリケーションの検証における有用性を評価する。(6)については、提案したスケジューリングアルゴリズムの効果について評価を行う。 そして、上記開発成果物を統合化するとともに、その評価を行い、1.「分散リアルタイムOSファミリ」及び 2.「ソフトウェア開発環境」の開発を完了する予定である。 そして、3年間の研究成果をまとめ、国内の研究会や海外の国際会議で発表するとともに、論文誌への投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議の発表を近隣国で開催された国際会議で行ったため、旅費の一部が次年度使用額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究発表のための旅費として使用することを計画している。
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