研究課題/領域番号 |
15K00095
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
斎藤 彰一 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70304186)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 耐障害性向上 / 多重OS / 仮想計算機環境 / 障害検知 / バージョンアップ |
研究実績の概要 |
本年度は、従来我々が開発してきたSoftware LPARによる障害検知機構の開発、対応アプリケーションの充実に主に取り組んできた。 障害検知の課題については、昨年度に開発を行った単一のカーネル内部において各種カーネル内の変数(カーネルパラメータ)を観測することによる異常検知システムを、多重OSシステムへの適用し、異なるOS間での異常検知手法へと適用範囲を広げた。従来はInter-Processor Interrupt(IPI)を用いた死活監視を行っていた。この方法では、CPUコアが動作しなくなった後での検知のみが可能であり、異常の早期段階での検知は困難であった。本年度の研究においては、カーネルパラメータを他方のOSから直接のメモリアクセスによって監視することで、早期に異常を検知するシステムとして実現した。 次に、対応アプリケーションの拡充を図った。これは、現在クラウド環境において活用されているコンテナ技術を本手法でサポートすることで、コンテナの耐障害性を向上するものである。今年度の研究において、Linuxでコンテナを実現するcgroupとNamespaceのOS間マイグレーションについて研究を行い、これを実現した。 バージョンアップの課題については、socket対応の実装を進めたがシステム構造が複雑であるために予定より遅れている。また、仮想計算機環境の課題については、すでに実現しているOS間での障害検知の課題と本課題を組み合わせて、仮想化環境での異なるVM間での障害検知手法の実現に取り組む予定である。これを通じて、異なるVM間でのアクセス制御などの基礎的な手法の確立を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画に挙げた課題の内、障害検知機能について、多重OS環境において他のOSからカーネルパラメータの監視による障害検知が可能となった。本機能は、OS内のメモリを参照して異常を検知する手法であり、従来はOS内部での障害検知に利用されていた手法である。OS内部での検知では、OSそのものの障害には有効に機能しない。本研究では、他のOSが直接メモリを参照することで、OSそのものの障害発生時でも的確に障害を検知できる。 対象アプリケーションの拡充についても実施し、クラウド環境などで広く利用されているコンテナを実現するLinuxのcgroupとNamespaceに対応した。これにより、コンテナの多重OS内でのマイグレーションが可能となり、コンテナの耐障害性向上を実現した。 その他、バージョンアップ手法と仮想計算機内での実現については、実装の難易度が高く、また、カーネル内の多様なデータ構造に対応するために予定より研究が遅れている。全体的に見て、研究は予定よりやや遅れていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの進捗は、予定よりやや遅れている。今年度は、最終年度であることから、全体のとりまとめを行うとともに、研究の進んでいる部分を活用しつつ、遅れている部分をできる限り進める予定である。 研究が進んでいる障害検知機能については、これまでに実装を行った多重OS間での実装を基にして、仮想計算機環境での研究を行う。仮想計算機環境での障害検知では、他の仮想計算機のメモリを参照するためのVM Introspectionを利用する。 次に、仮想計算機間でのカーネルデータ移送を行うために、障害検知機能での実装を活用する。障害検知機能でのVMIを拡張し、異なるバージョンのカーネルデータを変換しつつ移送する機構を実装する。この際、バージョンアップのための中間データ構造の作成の基礎データの収集を行い、バージョンアップを伴う移送の基礎研究をまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2か月間の入院により、予定していた出張が取りやめになったため。また、入院と退院後のリハビリのために、研究の進行にも影響が出て、国際会議などへの出張も実施できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究を進めることにより、国際会議や学術論文誌への投稿をすすめる。
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