研究課題/領域番号 |
15K00101
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
大平 雅雄 和歌山大学, システム工学部, 准教授 (70379600)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 派生開発 / プロアクティブマイニング / High Impact Defects / オープンソースソフトウェア |
研究実績の概要 |
本研究課題は,大規模な変更を伴う長期的な保守開発を対象とし,流用・移植過程で見過ごされる重大な欠陥 (High Impact Defects) の混入を早期に検知するための手法を構築することを目的としている.平成27年度は,計画通り以下の研究に取り組んだ.
(研究目的1) High Impact Defectsの実証的調査:先行研究の調査結果から,High Impact Defectsは主に,顧客(ユーザ)のシステム利用に直接的に大きな影響を与える欠陥と,保守担当者らに開発スケジュールの大幅な変更をもたらす欠陥とに大別できる.また,それぞれに3種類(計6種類)の欠陥が存在する.先行研究では1プロジェクトあたり100件分(合計400件)の不具合票を調査したに過ぎなかったが,6種類のHigh Impact Defectsの特徴を一般化するために本研究では,調査範囲を1プロジェクトあたり1,000件(計4,000件)に拡張し調査を実施した.
(研究目的2) High Impact Defectsの混入原因の特定:High Impact Defectsの混入原因を,プロダクトおよびプロセスデータから多面的に分析した.特に,(研究目的2-1:欠陥が混入したモジュールと他のモジュールとの依存関係の分析)では,モジュール間の依存関係を動的・静的に分析し,High Impact Defectsに繋がる関係が存在するかどうか,流用・移植されたモジュールが他のモジュールの正常な動作を妨げていないかどうかに着目した分析を行った.また,(研究目的2-2:モジュール開発者と保守担当者とのコミュニケーションの関係)では,モジュールを作成した開発者とモジュールを利用(流用・移植)する保守担当者とのコミュニケーションの質を分析し,流用・移植が円滑に行えるよう十分な意思疎通が図れているかどうかを分析した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り研究を実施できたため.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は以下の研究を実施する予定である. (研究目的2-3)報告から修正までを記録した不具合票と欠陥との関係:報告された1件の不具合の修正には複数のファイルにまたがる欠陥を除去する必要がある場合もあれば,1件の不具合を修正するために他の複数の不具合を先に修正する必要がある場合もある.複雑に絡み合ったこのような不具合報告と欠陥の関係や不具合同士の関係が,High Impact Defectsを誘発していないかどうかを確認する. (研究目的3) 異常検知のためのプロアクティブマイニング手法の構築: (研究目的3-1) High Impact Defectsの因果関係学習データセットの作成:(研究目的1)および(研究目的2)で得られたHigh Impact Defectsの種類と発生原因をマッピングし因果関係を抽出する.その上で,因果関係の集合を学習データとして利用するためのデータセットを作成する. (研究目的3-2) ソフトウェア変更のリアルタイム監視:High Impact Defectsを誘発するソフトウェアの変更をリアルタイムに監視する環境として,研究代表者が過去に構築したリポジトリマイニング基盤を活用する. (研究目的3-3) 異常検知のためのプロアクティブマイニング手法の構築:研究代表者らがこれまで構築した遅延相関分析手法を応用し,ソフトウェアの変更が一定期間後にHigh Impact Defectsとして顕在化する可能性を予測する手法を構築する.ソフトウェアに対する変更を様々なメトリクスで時系列に計測し,(研究目的2)で得られるHigh Impact Defectsとの相関を求めることで,ソフトウェア変更による異常を素早く検知するできると期待している.
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していた国際会議への投稿を見送り国内で開催された国際会議で研究発表を行ったことに加え,掲載費が安価な学会論文誌に論文2件が掲載されたため.
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次年度使用額の使用計画 |
研究進捗が概ね順調であり,当初予定よりも研究発表及び論文掲載が増える見込みのため,次年度使用額に充てる予定にしている.
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