本研究課題は,大規模な変更を伴う長期的な保守開発を対象とし,流用・移植過程で見過ごされる重大な欠陥 (High Impact Defects)の混入を早期に検知するための手法を構築することを目的としている.平成29年度は,計画通り以下の研究に取り組んだ.
(研究目的4) 手法の評価:平成28年度には,研究代表者らがこれまで構築した遅延相関分析手法を応用し,ソフトウェアの変更が一定期間後にHigh Impact Defectsとして顕在化する可能性を予測する手法を構築した(研究目的3).遅延相関分析は,あるメトリクス(説明変数)の変化が一定期間後にもう一方のメトリクス(目的変数)の変化に影響を与えているかどうかを,100種類のメトリクスと任意の期間tとのすべての組み合わせから求める手法である.予測手法は,ソフトウェアに対する変更を様々なメトリクスで時系列に計測し,High Impact Defectsの混入結果との相関を求めることで,ソフトウェア変更による異常を素早く検知することができるようにしたものである.
平成29年度は,複数のOSSプロジェクト(Eclipse Platformプロジェクト,Mozillaプロジェクト,Apacheプロジェクト)から取得したデータ(バージョン管理履歴および不具合管理履歴)を用いて予測手法が異常を早期に検知できるかどうかの検証実験を行った.また,協力企業との共同研究を通じて小規模な実証実験を行い,構築した予測手法が実務においても有用かどうかを評価した.
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