本研究では,近年のアジャイルな開発スタイルにおいても適用可能な,超柔軟なソフトウェアアーキテクチャの構成メカニズムを明らかにし,それに基づく設計手法を検討した. 品質の良いソフトウェアを開発するためにはソフトウェアアーキテクチャが重要であるが,決定した骨格構造の上に機能を配置する従来のソフトウェアアーキテクチャ構成論では,近年適用が広がっているアジャイル開発における迅速な変更に対応できない.本研究の成果は,ソフトウェアアーキテクチャの柔軟化によりソフトウェアの変更や発展が容易になり,大規模ソフトウェアのアジャイル開発を可能とするものである. 最終年度である本年度は,前年度までに策定したアーキテクチャ構成メカニズムの改良を行い,それに基づく設計手法を特に組込みソフトウェアを対象に検討した.前年度までに作成したアーキテクチャ構成メカニズムでは,このメカニズムにより設計したアーキテクチャの動的側面に関して,具体的な振る舞いは実装依存となりアーキテクチャ上では不定な部分が残り,意図しないタイミングのずれが生じる可能性があることがわかっていた.今年度はこの問題を解消するために,動的側面の定義を明確化した.また,組込みソフトウェア分野を対象にして,具体的な例題を想定して,このアーキテクチャ構成メカニズムを用いてどのように設計ができるのか,設計手法としての整理を行った.この検討において,単純な作業プロセスとしての設計手法だけでなく,設計する際の参考となるリファレンスモデルの存在が具体的な設計に際しては有効であることがわかった. 設計手法に関しては,上記のようにリファレンスモデルの重要性が認識されたため,今後の研究において具体的なリファレンスモデルの作成を行う予定である.また,組込みソフトウェア以外の分野の例題適用についても検討し設計手法としての完成度を上げる予定である.
|