研究課題
情報システムを導入予定の業務や活動における,人,組織,既存システム,機器等の間におけるゴールの達成依存関係をモデル化するためのモデリング言語 GDMA を考案し,その表記をUMLクラス図を用いて表記する手法を提案した.これは,GDMAのもとになるモデリング言語であるi*の表記が,一般の技術者にとって馴染みの薄い表記法だからである.また,i*流の表記法を継承した場合,独自のモデリングツールを開発する必要が発生する.これは,ツール利用者にとって,新しい表記法とツールを学ぶ必要が発生し,結果として,GDMAにおけるモデリング促進を阻害することになる.提案したクラス図に基づく表記法でモデリングし,導入すべき情報システムの良し悪しを計算するためのツールを完成させた.また,当該ツールの導入実験を行い,当該ツールの学習容易性および操作性の良さを確認することができた.開発したツールは既存のUMLモデリングエディタである astah のプラグインとして実現されている.よって,astah の利用なら,低い学習コストと,低い準備コストで,当該ツールの利用を開始することができる.また,当該ツールは,文法チェッカー,メトリクス自動計算器,特殊ステレオタイプ等の入力補助機能の三つの機能を備えている.文法チェッカーは,単に構文的なチェックのみではなく,一部,意味的なチェックも行なう機能を有している.これによって,ゴール依存関係において指定された品質特性の数と,実際の特性値の数の一致等,メトリクスを計算に必要な意味条件のチェックが期待できる.メトリクス計算では,モデルの変更によって,メトリックスが改善しているか,悪化しているかを明示する機能によって,システム導入の定量的な検討が期待できる.入力補助機能によってモデル作成の生産性向上が期待できる.これらの期待を評価実験を通して確認できた.
2: おおむね順調に進展している
モデリングおよびメトリクス計算ツールが完成し,その評価実験を終えることができたため,当初目標として掲げていた,可視化の部分まで研究が達成した.特に,日本で広く利用されているUMLモデリングツールの追加機能として,本ツールを開発したため,その導入および評価実験が思った以上に問題なく行なうことができた.ツールおよび実験結果を論文としてまとめ,2017年9月に行なわれる国際会議に投稿し,既に採録がきまっている.研究結果の公表という意味でも,順調に研究活動が進捗している.
これまで開発したツールのアーキテクチャやデータモデルに基づき,モデル変換ツールの実現をめざす.パターン自体は,既に論文発表を行なっているため,ツールの機能追加および,評価を中心となる.パターン自体の提案においては,実際にパターンを適用する際の対話的な視点はない.ツールとして開発する場合,パターン適用箇所の発見,適用した場合の高価等を対話的に可視化することで,ツール利用者のパターン適用に関する意思決定支援を行なう必要がある.その点においては,ツール開発において試行錯誤を通して,実現する予定である.
成果発表のための旅費が予想より安価であったため,次年度使用額が発生した.
次年度における旅費に当該予算を補填する.
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 5件)
情報処理学会論文誌
巻: 57 ページ: 1576 - 1589