研究課題/領域番号 |
15K00123
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
長谷川 剛 大阪大学, サイバーメディアセンター, 准教授 (00294009)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | NFV / SDN / 資源配置 / 化学反応式 / タプル空間モデル / VNF |
研究実績の概要 |
NFV やマッシュアップWebサービスなどのネットワークシステムにおいては,実行環境の構成要素である汎用サーバ上に複数のサービスや機能を配置し,実行する.その分散配置されたサーバに,どのサービスや機能を配置するか,及び配置された各サービスや機能にどう資源を割り当て実行するかを各サーバで自律的に決定することが重要であり,物理的に広い範囲のネットワーク環境や,サーバ障害や環境変動の発生時においても,システムの冗長性や成長性を保ちながらシステム全体を制御できる. 本研究では,化学反応式を利用した空間拡散モデルに基づいて,上記のようなネットワークサービスにおいて,提供するサービスや機能を適切な場所で実行し,サーバ資源をそれらで効率よく共有する手法を提案している.提案手法では,サービスや機能を実行するサーバを個々のタプル空間とみなし,ユーザからのリクエスト量やサービスの需要量等を化学物質として考え,サーバ内の局所的な状況を化学物質の濃度変化や拡散によって表現する.そして,その空間で,各サービスに対するリクエストをサーバ資源を用いて処理する反応式を定義し,それを実行することにより,サービスの需要に応じたサーバ資源の共有をシステム内の各デバイスの自律的な動作によって実現する. また,提案システムをNetwork Function Virtualization (NFV)を実現するために適用することを考え,NFVにおけるサービチェイニング,Virtualized Network Function (VNF)のサーバへの配置,フロー経路の決定などを行うための化学反応式を構築し,その有効性を確認した.また、簡易なNFV環境を用いた実装実験により、提案システムが仮想化ネットワークシステムに求められる様々な機能を実現できることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究では、複雑なNFVのフローへの資源割り当て、サーバの資源制御、サービスチェイニングなどを化学反応式で表現すると同時に、サーバにおけるフローへのVNFの適用を多段階の酵素触媒反応を用いた反応表現を検討した。また、それにより複雑化するパラメータチューニングを行い、適切なチューニングを行うことで過不足なくフローへVNFを適用できることを示した。これらの成果は、当初の進捗予定に合致している。 また、提案方式を実環境へ適用するための実験を行っている。実験においては、仮想化サーバ・ネットワーク環境において提案方式を実装すると共に、提案方式を実サーバの資源割当にどう反映させるかについて慎重に検討し、実環境においてキャリブレーションを行うことでそれが可能になることを明らかにするとともに、それを実験によって実証した。さらに、ビットレートが異なる複数フローへの資源配分や、ビットレートの動的な変化にも問題なく追随し、サーバの資源割当とフローへのVNFの適用を適応的に行えることを明らかにした。これらのことから、当初の進捗予定に合致していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、多段階の酵素触媒反応へ拡張した基礎モデルの検証を、複数サーバから構成される複雑なVNF環境での検証を進める。具体的には、今年度実施した、多段階の酵素触媒反応のパラメータチューニングの大規模NFV環境での有効性の検証や、サーバ間での連携方式との親和性の確認、システム全体でのフローへのVNF適用やサーバの資源管理の有効性の、大規模シミュレーションによる確認などが上げられる。 また、実験評価においては、今年度は単一サーバでのVNFの提供を行っていたが、それを複数サーバから構成されるNFV環境へ拡張する。拡張のための基礎モデルの検討は既に行っており、必要な化学反応式についてもシミュレーションによってその有効性を検証しているため、その仕組みを実際のNFV環境へ適用するための方法について検討する。具体的には、複数サーバでの同一VNFの提供によるロードバランスの実現、VNFの適切な配置による、フローの処理遅延時間の低減、システム全体での資源割当の適正化や動的な需要変動への対応可能性の検証などが挙げられる。
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