本研究では,化学反応式を利用した空間拡散モデルに基づいて,上記のようなネットワークサービスにおいて,提供するサービスや機能を適切な場所で実行し,サーバ資源をそれらで効率よく共有する手法を提案した.提案手法では,サービスや機能を実行するサーバを個々のタプル空間とみなし,ユーザからのリクエスト量やサービスの需要量等を化学物質として考え,サーバ内の局所的な状況を化学物質の濃度変化や拡散によって表現した.そして,その空間で,各サービスに対するリクエストをサーバ資源を用いて処理する反応式を定義し,それを実行することにより,サービスの需要に応じたサーバ資源の共有をシステム内の各デバイスの自律的な動作によって実現した.また,提案システムをNetwork Function Virtualization (NFV)を実現するために適用することを考え,NFVにおけるサービチェイニング,Virtualized Network Function (VNF)のサーバへの配置,フロー経路の決定などを行うための化学反応式を構築し,その有効性として、サービスチェイニングの実現、ネットワーク障害発生時の経路変更などが可能であることをを確認した.また,提案方式が持つパラメータが方式の挙動に与える影響を数学的解析によって明らかにし、その動作を確認した。さらに,ESTIが提唱するNFVのフレームワーク上での提案方式の実装方針を検討し、オープンソースのNFV環境であろOPNFVへの提案方式の実装を進め、提案システムが仮想化ネットワークシステムに求められる様々な機能を、汎用的なアーキテクチャ上で実現できることを示した.
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