申請者は,無線マルチホップネットワーク技術を無線センサネットワークに応用することを試みている.本申請では,双方向フロー間でのNC(Network Coding)とPA(Passive ACK)を組み合わせるIFNCPA(Inter Flow Network Coding with Passive ACK)を開発し,高効率化つ高信頼な双方向通信の実現をねらっている. 本年度は,経路を分けるべきかを判断するための指針を明らかにしておくことが重要との考えから,フローのスループットに大きな影響を与える深刻な隠れ端末数をメトリックとする経路選択制御方式に関する検討を行った.その結果,経路を中途半端に分離することによって深刻な隠れ端末が生じるよりは,経路を近づけて互いにキャリアセンスできるようにすることが有利であり,深刻な隠れ端末数を経路選択メトリックに取り入れることでより高いスループットが選択される可能性が高まることを明らかにした. また最終年度でもあることから,IFNCPAの研究成果を取りまとめて学術雑誌に投稿することに注力した.査読委員からの要求を満足するために,シミュレーション実験を繰り返し,提案方式の有効性をより明確にすることに時間を割いた.例えば,ITU-T Recommendation G.114 ならびに G.1010 では,多くのインタラクティブアプリケーションでは,遅延上界が 150ms 以下が好ましく,ネットワーク設計においては 400 ms 以下となるようにターゲットを定めることを示していることから,エンコード待ち時間の最大値 Wmax を変更することでこのことが達成できることを示した.その結果,最終的に採択となった.
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