研究課題/領域番号 |
15K00125
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
高木 由美 神戸大学, システム情報学研究科, 助手 (70314507)
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研究分担者 |
太田 能 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 教授 (10272254)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 車車間通信 / 走行支援 / アドホックネットワーク / 情報配信 |
研究実績の概要 |
27年度は、車両の遮蔽と車載器の普及が、車車間通信に与える影響についての知見を得ることが計画されていた。そのため、まずシミュレーション評価に用いる商用シミュレータ Scenargie において、車車間通信環境を構築した。シナリオは、市街地を想定した大通りと小道からなる1.5 km四方の変則的なグリッド環境である。伝搬モデルには、建物による遮蔽を考慮しているITU-R P.1411を用いることにした。しかし、大型車両による遮蔽の影響は考慮されていないため、送受信アンテナを結ぶ直線上に存在する大型車両1台につき、ITU-R P.1411より算出した電波強度から10dB減衰するようにモデルを改良した。 この改良モデルを用いたシミュレーション環境において、車載器の普及が車車間通信にどのような影響を与えるか実験を行った。車両台数は、情報配信車両1台、その他の大型車両と小型車両は合計500台と3,000台とした。 まず、車載器を大型車両から普及、大型車両と小型車両の両方に同じ割合で普及、小型車両から普及させた場合の3つの場合について、小型車両におけるパケットの受信率を比較し、普及初期時に次の2つのことを確認した。1つ目は、大型車両による遮蔽の影響があること。2つ目は、車載器の搭載は、大型車両と小型車両のどちらにもある程度バランスよく普及させることが望ましいこと、である。 次に、上記の結果を受けて、大型車両の普及をどのくらい促進させるのが適切であるかを調べた。ここでの合計車両数は3,000台とした。シミュレーション実験より、全体の普及率が5%未満と低普及率の時は、大型車両の普及促進速度が5倍以上のときに、小型車両におけるパケットの受信率が向上することがわかった。一方、全体の普及率が5%以上のときは、大型車両への車載器搭載を過剰に促進することは、パケットの受信率低下に繋がることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
27 年度は、低普及時における緊急車両の走行支援に関する検討も行う予定であった。しかし、緊急車両 1 台、その他の大型車両と小型車両は合計 500 台で、全車両に車載器が搭載されているのみの評価しかシミュレーション実験できていないため。
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今後の研究の推進方策 |
28 年度は、まず 27 年度に積み残した低普及時における緊急車両の走行支援に関する検討を行うべきかと思われる。しかし、車車間通信が普及してくると、IEEE 1609 WAVE における標準の通信方式では、緊急車両情報や緊急車両の走行予定経路情報の配信自体が周辺車両に届かないことが生じやすい。このことから、緊急車両の走行支援を行う以前に、緊急車両から送信される情報を確実に届けられる方策を考えることが先決であると判断し、こちらに取り組みたいと思う。まずは、IEEE 1609 WAVE において、マルチホップによる情報配信に関する知見を得る。その後、優先権を与えることで情報配信を確実に行えるようなチャネルアクセス方式を検討する。 また、事故発生時は、道路が通行不可能になったり、事故見渋滞が発生したりと、短時間で急激に渋滞が発生することが高い。車車間通信は、このように短期間で発生する渋滞情報の収集に適していると考えられる。そこで、車両の移動速度や周辺の車両数などの情報から渋滞を予測する、といった渋滞センシングに関する方式の検討と実装、および評価を行う。渋滞センシングには、地図情報と画像処理を組み合わせた研究がすでに行われている。しかしながら、地図情報が最新であるとは限らないため、本研究では遅延が小さい車車間通信だけでの渋滞センシングに取り組む。ただ、どうしても車車間通信だけでは期待する結果が得られない場合は、地図情報や画像処理など他の情報も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
27年度に購入予定であった計算機 1台を、他の予算で購入することができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
シミュレーション用の計算機は、27年度購入した1台では不足であるため、28年度に本予算より購入予定である。
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