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2016 年度 実施状況報告書

ゲーム理論的アプローチを用いた制御可能型P2Pコンテンツ配信に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 15K00126
研究機関奈良先端科学技術大学院大学

研究代表者

笹部 昌弘  奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 准教授 (10379109)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードP2Pネットワーク / コンテンツ配信 / ゲーム理論 / 組合せ最適化
研究実績の概要

Peer-to-Peer (P2P)コンテンツ配信では,サーバは常時システム内に存在する一方で,参加中のユーザ端末(ピア)については配信中でのシステムへの参加・離脱が生じうる.特にピアの途中離脱は,(1)サーバから離脱したピア(離脱ピア)へのピース(コンテンツの断片)の送信に要したサーバのアップロード回線容量が無駄になる,(2)離脱ピアから他のピアへのピース送信の機会が減少する,といった観点での悪影響が考えられる.そこで今年度は,このようなピアの途中離脱がP2Pコンテンツ配信の性能(ファイル取得完了したピアに対する平均ファイル取得時間)にどのような影響を与えるかについて検討した.

配信サーバがコンテンツ配信開始前にどのピアがどの時点でシステムを離脱するかどうかを予測することは困難である.このような状況における最適なピースフロー(いつ,どのピアからどのピアにどのピースを送信するか)は以下の2段階の最適化の手順により導出できる.まず,ピアの途中離脱が生じないと仮定した場合のピースフロー決定問題,すなわち従来の整数線形計画問題Pをソルバにより解く.次に,ある時点tにおいてあるピアiが離脱するものと仮定すると,(a) 問題Pで得られた最適なピースフローの中で,時点t以前のピースフローを保持する,(b) 時点t以降,ピアiに対するピースの送受信が生じない,という制約を問題Pに加えた最適化問題P'を再度解くことにより,ピアの途中離脱が予測できない場合における最適なピースフローを導出することができる.また,元の問題にPに制約(b)のみを加えた問題P''は,サーバがピアの途中離脱を予測できる場合に相当する.数値実験により,P'とP''における最適なピースフローの違いを分析した結果,アップロード回線容量の大きなピアが配信初期に途中離脱する場合に性能の劣化が大きくなる傾向が確認された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ピアの途中離脱が生じる場合における最適なピースフローを導出するための手順を提案した.数値実験を通して,ピアの途中離脱がシステム性能に与える影響を明らかにした.これらの成果については電子情報通信学会総合大会において発表している.

ただし対象とする整数線形計画については,ピア数やピース数の規模に対して計算量が予想より大きくなる傾向が見られた.この点に関しては,最適化問題における定式化を工夫するなど対処を進めているが,その他にもヒューリスティックな手法による準最適解の導出なども含め,今後も柔軟に対応を進める予定である.

今後の研究の推進方策

今年度はピアの途中離脱のシナリオとして,任意のタイミングで任意のピアが離脱する状況を想定していた.これは,ピア自体の故障やネットワークの障害といった障害型離脱とみなすことができる.一方,コンテンツ配信においてはユーザがダウンロード速度に不満を感じた際に途中でコンテンツの取得を諦める場合が考えられる.このような意図的離脱に対して耐性のあるピースフローの分析が課題として残されている.特に,ピアの途中離脱が生じない場合の分析結果では,配信初期にサーバがアップロード回線容量の小さなピアに優先的にピースを送信する場合に最適なピースフローが実現できることが示されていたが,その場合,意図的離脱のシナリオでは,アップロード容量の大きなピアが配信初期に途中離脱する可能性が高くなる.このような問題への対処策を明らかにすることが重要となる.

また,コンテンツの種類としてこれまで対象としていたファイル型以外に,動画等のストリーミング型コンテンツも想定される.ファイル型コンテンツの場合は,ファイルのリクエストから取得完了までに要する時間(ファイル取得時間)がユーザにとっての体感品質(Quality of Experience: QoE)を決める主な要因であった.一方,ストリーミング型コンテンツの場合は,コンテンツを途切れなく見続けるために必要となる,コンテンツのリクエスト時に要するバッファリング時間がユーザのQoEの観点で重要となる.バッファリング時間がピース毎の取得に要する時間の最大値で表現できることに着目すると,ファイル型コンテンツに対する最適なピースフロー決定問題をストリーミング型コンテンツ配信の場合へと拡張することができる.

次年度使用額が生じた理由

購入を予定していた計算機の発売時期が遅れているため.

次年度使用額の使用計画

購入を予定している計算機の発売時期が次年度になる見通しであり,その購入費用の一部に充てる予定である.

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2017

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] Tit-for-Tat型P2Pファイル配信におけるピアの途中離脱が平均ファイル取得時間に与える影響に関する一検討2017

    • 著者名/発表者名
      香山侑槻, 笹部昌弘, 笠原正治
    • 学会等名
      電子情報通信学会総合大会
    • 発表場所
      名城大学(愛知県名古屋市)
    • 年月日
      2017-03-22 – 2017-03-25

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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