研究実績の概要 |
徘徊検知方式の検討 前年度に提案した見守りシステムでは,細かい粒度の生活圏からの逸脱を検知して徘徊行動を判断し,その頻度から認知症の進行度を推定する.さらに,認知症が進行したと判断した場合,システムは詳細に見守るように見守り範囲を絞る.つまり,認知症が軽度な段階では大まかな見守りを行い,認知症が重くなると詳細な見守りを行う.大まかな見守りでは認知症患者のプライバシーが守られるため,患者のプライバシーを考慮した見守りシステムとなっている.前年度は,計算機シミュレーションで徘徊行動パタンを生成し,徘徊行動を判定するアルゴリズムを検討した.本システムでは,徘徊行動の検知が最も重要であることから,今年度は徘徊行動として特徴的であるとされる Direct, Pacing, Lapping の3つのパタンについて,実際にGPSデータを収集して,GPSの位置情報取得誤差が混入されたデータから徘徊行動を抽出するアルゴリズムを検討した.特徴量として(1)移動方向の転換頻度と,(2)ある時間区間の総移動距離と,その時間区間の開始と終了時点の場所の距離の比,を用いた.(1)は目的地が定まらない認知症患者の移動パタンによく見らえる現象であり,(2)は同じ場所を往復したり,大回りしてもとに戻るなど移動を判定する.また,位置情報はGeoHexコードで表現することで,位置情報の微小な変動を吸収してロバスト性を向上させるとともに,移動方向の転換を容易に判断できる.これらの特徴量を用いて,三種類の徘徊パタンの分類器をSVM により構築した.評価実験の結果,平均約85% の精度で徘徊行動を識別できることが明らかになった.
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