研究課題/領域番号 |
15K00130
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
近堂 徹 広島大学, 情報メディア教育研究センター, 准教授 (90437575)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | インタークラウド / ライブマイグレーション / QoS / OpenFlow |
研究実績の概要 |
本研究では,複数の仮想サーバから構成される分散システムに対してしなやかさを提供することを目的として,ハードウェアやハイパーバイザの資源利用状況だけでなく,その上で動く仮想サーバ群のアプリケーションの内部状態やサーバ間のトラフィックの推移を考慮したクラウド間のシステムマイグレーションを実現する。マイグレーションの判断に必要な指標をコンテキストとして体系的に管理することで,アプリケーション特性に応じたマイグレーションを行う。 平成28年度は,フロー特性をアプリケーションコンテキストとして表現したライブマイグレーション手法の実装と評価を行った。OpenFlow技術を利用して、OpenFlowスイッチ間のフローごとのレイテンシを取得し、それをライブマイグレーションの指標とすることが可能になった。評価実験から、クライアント端末から処理対象サーバまでの経路やレイテンシを考慮したグローバルマイグレーションが効果的に機能することを示した。また、デモンストレーションとして仮想デスクトップサービスを想定し、ユーザ端末から近い位置に動的にライブマイグレーションし、レスポンス低下を抑制できることを確認した。また,複数VMから構成される広域分散サービスを表現するための構成記述を検討し,記述された分散サービスをオープンソースソフトウェアによるサービス監視と自動復旧システムを行う支援システムについて実装し,基本評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フロー特性をアプリケーションコンテキストとして表現したライブマイグレーション手法について研究開発を進めた。モバイル端末の処理をクラウド上の仮想マシン(VM)へオフロードするMobile Cloud Computing(MCC)を想定し、ユーザに対するレスポンスをし指標としたグローバルライブマイグレーション支援システムを開発した。OpenFlowを技術を利用し、アドレス変換機構とスイッチ間レイテンシ計測機能を実装し、ネットワーク上に分散配置させることで、スイッチ間を透過的にVMがライブマイグレーションすることができ、かつマイグレーション先をレイテンシ情報を用いて動的に決定することが可能になった。評価実験では、ライブマイグレーション前後の通信継続性や端末とVM間でのスループットの評価を行い、有用性を明らかにした。 また、複数VMから構成される広域分散サービス(例えばウェブ+DBサービス)を表現するための構成記述について検討した。JSONを用いた形式言語でVM間の連携(起動順序等)を表現し、これをもとにVMの制御ができることを示すために、障害時に該当VMと関連があるVM群を適切な順序で復旧することができる自動復旧システムのプロトタイプを作成した。 以上の成果から、「複数のVMで構成される分散サービスを形式言語で表現し、これを元にしたVM制御手法の実現」と「フロー特性を考慮したグローバルライブマイグレーションの実現」が達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となるため,これまで進めてきた2つの成果を広域実験環境等で行い、有効性の検証を行う。また、これまではハイパーバイザとしてQEMU/KVMの仮想環境を用いてきたが、コンテナ型による仮想化環境への適用についても検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は既存設備と本助成金による物品を利用した研究室内での実装および評価を行い、広域実験におけるサーバ購入等の物品購入を次年度にしたためである。研究計画に大きな変更が生じるものではない。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度での広域実験時に計算機資源が必要な拠点に配置するためにPCサーバを購入する予定である。
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