研究課題/領域番号 |
15K00131
|
研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
川原 憲治 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (40273859)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | トラヒックエンジニアリング / ネットワーク省電力化 / 輻輳制御 / Multi-Path TCP / 通信トラヒック理論 / M2M / IoT / ビッグデータ |
研究実績の概要 |
インターネットの普及・発展、および、M2M(Machine-to-Machine)/IoT(Internet of Things)など人間が直接的な通信主体ではない情報(ビッグデータ)の爆発的な増加に伴い、トラヒックエンジニアリング(Traffic Engineering, TE)の重要性はさらに高まっている。具体的には、送受信ノード間のトラヒック到達可能経路が複数あり、かつ、転送トラヒック量が増加した時、 1) 収容トラヒックの要求QoS(Quality of Service)を満たしつつ、 2) 複数経路を活用してネットワーク資源を有効に活用する、 ことを目的とするが、トラヒック発生ノードの空間的な変動、および、短期的なトラヒック変動に基づき省電力化を意識した場合(省電力TE)、その実現において上記2)は 2') 少数のリンクや構成機器にトラヒックを集約して低利用ネットワーク資源を遮断する、となる。 本研究課題では、トラヒック発生ノード群の空間的なダイナミクス、および、トラヒック発生時点や送信量の時間的なダイナミクスを考慮し、ネットワーク利用を最低限に留めて余剰資源を遮断する省電力TE、もしくは、転送品質の充足を前提とした資源を最大限に利活用する輻輳緩和TEを行う統括的な手法を提案、評価する 平成28年度は、TE問題解決のための経路割当/利用リンク・ルータの決定アルゴリズムを導出し、End-to-Endのトランスポートレベルで実現するためにMPTCP(Multi-Path TCP)の利用を提案してテストベッドネットワークにおける実装実験による検証を行い、統括的TEの枠組みについて検討をはじめた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施計画に基づき、まず、省電力TEとしてのネットワーク経路木作成問題における基点ノード選択指針、経路木作成方針、および、トラヒックの時間的ダイナミクスに対応するための追加リンク選択指針に関して提案し、有線/無線双方のネットワークを想定し評価した。 次に、End-to-Endに複数経路(Subflow)が存在することを前提としたMulti-Path TCPによる空間的省電力TEの実現のために、H27年度に構築したテストベッドネットワークにおいて省電力MPTCPとして実装し、シミュレーション評価に続き実験を通して有効性を検証した。 さらに経路中の利用状況に応じて時間的な省電力化を目指す省電力TCPにおいて、自身のフロー制御機構に基づく簡易な経路利用状況判断方法について検討した。 以上は、申請時の実施計画に掲げた項目の(1)-(3)に該当し、H29年度は(4)に示した輻輳緩和TEを含めた統括的手法の検討に着手可能となっていることから順調に進展しているものと判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの2年間で、省電力TEに着目した簡易ネットワークモデルにおける性能解析や経路決定アルゴリズムの確立を行い、時間的TEのための省電力TCPや空間的TEの実現のための省電力MPTCPの提案と実装を通して、ネットワークの利用状況が低い場合のTE手法について整理してきた。最終年度にあたるH29年度は、利用状況が高く輻輳緩和を目的とする従来TEを包含した統括的TEとしての実現を目指し、MPTCPによるEnd-to-End制御をベースとして各経路における利用状況判断メカニズムの確立と、数100~数千ノード規模ネットワークにおける有効性の検証を実施する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初購入予定であったテストベッドネットワーク用の無線APとノートPCについて、無線環境による実験に及んでおらずその購入を見送ったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度購入予定のデータ解析用ファイルサーバのスペック向上に充当する。
|