本研究では,多様な通信品質の要求に対応可能な複数の通信経路を活用する新しい高速大容量無線ネットワーク機構を確立することを目的としている.2018年度は,複数経路を用いる無線ネットワークがアプリケーションに与える影響について検討した.具体的なアプリケーションとして,主に動画像ストリーミングにおける体感品質に着目して研究に取り組んだ.具体的には,主に以下の二つのサブテーマに取り組んだ. 1) アプリケーションレベルでのスケジューリング方式:本サブテーマでは,アプリケーションレベルで動画の内容に応じて要求する動画品質を適応的に選択する手法について検討した.具体的には,各動画フレーム間でのシーンの動きの大きさに着目したアダプティブストリーミング手法を考案した.さらに,クライアントのバッファ容量と動画品質の変化回数に着目したアダプティブストリーミング手法を考案した. 2) ネットワーク状態がアプリケーションに与える影響:本サブテーマでは,前年度に行った実際の測定結果を用いた無線ネットワークのスループット変動モデルをネットワークエミュレータで再現し,考案した各種アダプティブストリーミング手法を実験により評価した.動画停止時間,動画品質の変化回数等に関して,変動するネットワーク環境において,提案手法がユーザの体感品質向上に有効であることを確認した.さらに,複数経路環境がアプリケーションに与える影響について検討した.
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