マルチスケールSDNの制御機構の要素技術となる、『制御ネットワーク構築技術』、『コントローラ負荷制御技術』、『マルチスケールSDN管理技術』の研究を進めた。制御ネットワーク構築技術としてはセキュリティ技術への応用を例とした制御機構の改善を、コントローラ負荷制御技術では将来的な制御機構のコンテナ化を想定した負荷制御機構を、マルチスケールSDN管理技術では異なるポリシの多層構造性制御するマルチテナント管理機構の研究に取り組んだ。 制御ネットワーク構築技術については、モバイルクラウド環境の基盤ネットワークにおけるDDoS攻撃を例として、分散軽量型の防御機構を面的に広範囲で制御するため技術開発を行った。ここでは、Open vSwitchの機能拡張によりDDoS防御性能を格段に向上させた。これにより70000ppsの攻撃中に8000TCPコネクションのうち85%は3回以下の再送で接続可能となった。 コントローラ負荷制御技術については、マルチテナントの各コントローラがコンテナ化された環境での負荷制御を想定して、Dockerコンテナのコア間負荷制御の技術を開発した。また、多様な資源要求を適切に制御するための自律的グループリソース割当て手法のモデルレベルでの分析を進めた。 マルチスケールSDN管理技術については、マルチスケールSDNの典型的な環境として、マルチテナントSDNの設計・制御技術を確立した。マルチテナントSDN環境では、各テナントのSDNやそれらを管理するSDNなど、様々なスケールのSDNが階層化されており、さらに各々が独自の設計・ポリシで運用される。本研究では、アドレス空間等の各テナントが使用するリソースの競合を検証ベースで分析し、競合を解消するような変換制御の設定をSDN全域に適用する機能を実現した。これにより、将来的にはマルチスケールSDN管理プロセス全般の自動化が可能となる。
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