研究課題/領域番号 |
15K00139
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
池川 隆司 早稲田大学, 理工学術院総合研究所(理工学研究所), 客員上級研究員(研究院客員教授) (00721804)
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研究分担者 |
岸 康人 神奈川大学, 付置研究所, 研究員 (50552999)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | インターネット / メッセージ分割 / ペイロード長 / トラヒックエンジニアリング / 待ち行列モデル / 平均応答時間 |
研究実績の概要 |
インターネットのようなパケット転送型ネットワークでは、ウインドウサイズ、ルート選択、ペイロード長のような様々な制御パラメータが存在する。本研究では、これらのパラメータの中で、無線ネットワークでは重要なパラメータであるペイロード長を最適化する問題を取り上げる。 通常、ペイロード長を小さくするとアプリケーションにおいて発生するデータ(メッセージ)は、ペイロード長を超える場合、複数のデータ(パケット)に分割される。メッセージ分割によって、物理リンクでの平均パケット送信時間の減少やビット誤りによるパケット廃棄率(結果的にはパケットの再送率)の減少という正の効果をもたらす。 一方、複数パケットの物理リンクへのバースト的な到着、各パケットに付加されるヘッダ等のオーバヘッド増加、そして長期記憶性が発生するという負の効果が発生する。本研究では、メッセージ分割が発生するネットワーク環境において、ペイロード長に関するトレードオフ問題をバランス良く解決するトラヒックエンジニアリングを確立することを目的としている。 平成29年度では、メッセージ分割による正の効果である平均パケット送信時間の減少と負の効果である複数パケットの物理リンクへのバースト的な到着を表現するために、客(パケットに相当)が集団で到着し、その客のサービス時間(物理リンクでのパケットの送信時間に相当)に相関がある、実システムの振る舞いを反映させた待ち行列モデルを考案した。その待ち行列モデルを使って、メッセージ長の分布とメッセージの発生間隔、ペイロード長が与えられた時のパケットの平均応答時間の解析解を導出した。数値例より、トレードオフ問題を解決する最適なペイロード長が存在することを明らかにした。さらに、メッセージ長が指数分布に従うとき、平均応答時間を最小にするペイロード長の解析解を導出した。これらの研究結果をarXivに投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度では、メッセージ分割が行われ、ビット誤りによって廃棄されたパケットがstop-and-wait方式により再送され、さらにその再送パケットの長さは最初の送信の最初の送信時のパケット長と等しい性質を有する等の実際の振る舞いを表現したネットワークの数理モデルを考案した。平成29年度は、この数理モデルに、メッセージ分割によって生じる複数のパケットのバースト的到着を反映させ、平均応答時間、グッドプット、エネルギー消費量のような様々なQoS (Quality of Service)の解析解を導出する予定であった。 しかし、研究代表者は専門書「研究者・技術者のための文書作成・プレゼンメソッド」(日本評論社2018年3月出版)の執筆に時間をとられてしまい、研究に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
arXivに投稿した研究成果を著名な査読付き国際会議や国際的学術論文誌に投稿する等の研究成果の可視化を行うとともに、論文の執筆を通して、研究成果の品質を向上させる。ビット誤りによるパケット再送とパケットのバースト的な到着を表現する高度な数理モデルの開発については、連携協力者を含む有識者と積極的に意見交換を行い、研究の加速化を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議への出張や論文誌への投稿を見送り、その出張費や投稿経費の支出が不要となったため
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