研究課題/領域番号 |
15K00143
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
田村 瞳 福岡工業大学, 工学部, 助教 (30423601)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | IPv6アドレス / 地理的位置情報 / メッシュコード |
研究実績の概要 |
H27年度に開発した位置情報に基づくIPv6アドレスを生成するソフトウェアを利用し,小規模ネットワークにおける通信実験を実施した.H28年度は,すべてのノードが位置情報に基づくIPv6アドレスを有する場合における通信実験に加えて,既存のフォーマットに従った(位置情報を含まない)IPv6アドレスを有するノードが混在する場合に,既存のIPルーティングのルールに従って必要な経路設定を行うことで,位置情報に基づくIPv6アドレスを有するノードが混在するネットワーク環境においても通信が可能となることを実験環境において検証した.よって,既存IPv6アドレスによって構築されたネットワークとの相互運用性,さらには,既存IPプロトコルとの相互運用性があることを示すことができた. また,Dynamic Host Configuration Protocol(DHCP)サーバのように,位置情報に基づくIPv6アドレスをクライアント端末に対して割り当てるサーバ機能を実装した.これによって,位置情報を含むIPv6アドレスの手動割り当てと自動割り当てを可能とした. さらに,本提案におけるIPv6アドレスに基づいて構築したネットワーク上において,位置情報に基づく情報配信を可能とするアプリケーションの試作を行った.アプリケーションでは,情報配信を行いたい範囲をメッシュコードにより指定し,それに対応する情報をデータベースに登録しておけば,アクセス元ユーザの位置に最適なデータのみをユーザが属するネットワークに配信できる.これによって,既存のインターネットにおける位置情報に基づく情報配信アプリケーションのように,定期的にユーザ端末からコンテンツサーバへとGPS情報を送信するオーバヘッドなしに,位置情報に適した情報のみを効率的に配信できるアプリケーションの基盤部分を実現できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では,H28年度にはH27年度に構築した位置情報ベースのネットワークにおいて,位置情報に基づく通信に関する検証実験を実施する予定であったが,位置情報ベースのネットワークと既存のIPv6アドレスに基づくネットワークとの相互運用性を確認できたことで,本研究項目については当初の計画以上に進展しているといえる.また,計画通り,サーバ-クライアント間でのGPS情報の交換オーバヘッドなしに,ある1か所の範囲にのみ情報配信を行うアプリケーションについての試作も実現できた. また,当初の計画では計算機シミュレーションによって位置情報ベースのネットワークにおける経路制御の検討を行う予定であったが,実ネットワークにおける検証が進んでいるため,シミュレーションによる検討を実施せず,実ネットワークベースでの検証実験を進めている.この点においては当初の計画とは評価方法は異なっているものの,適切な評価実験を進めることができているものと考える.
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今後の研究の推進方策 |
H28年度までに構築したネットワークの規模を大規模化した通信実験や,そのネットワーク上における複数範囲への情報配信アプリケーションの構築を実施する.現在のIPv6アドレスフォーマットでは,通信範囲の変更方法が既存IPプロトコルと親和性の高いフォーマットとなっているため,他のIPv6アドレスフォーマットの検討は行わない.さらに,経路制御に関する検討については,位置情報を含まない既存のIPv6アドレスを用いたネットワークとの相互運用性について実ネットワーク上での検証まで完了した.H29年度は,送信元ノードと宛先ノードとの地理的位置を考慮した効率のよいルーティング手法について検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に学会発表を行い,その旅費のための費用を多めにとっておいたため残額が発生してしまった.
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次年度使用額の使用計画 |
H29年度以降に実施するネットワーク規模を拡大した実験のために必要な消耗品の購入に充てる予定である.
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