研究課題/領域番号 |
15K00147
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
大沢 裕 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (50152111)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 位置情報サービス / 移動体 / 連続検索 |
研究実績の概要 |
申請時に計画した平成28年度の主課題は以下の3点であった。(1)空間的近接性に基づく多様な検索の統一的枠組みの実現、(2)より複雑な検索方式に対する効率的連続検索方式の実現、(3)多様な検索を対象としたsafe-regionの高速生成。平成28年度はこれらの全ての課題に取り組み、それぞれの項目での成果を国際会議等で報告した。 まず、(1)と(3)に関してはH27年度から取り組んだ。Set-kNN、Ordered-kNN、Reverse-kNN、距離範囲検索に対する統一的な高速検索の枠組みを実現し、更にそれをsafe-region生成に発展させた。処理時間の短縮は、道路網距離算出の高速化で実現した。この高速化の主要なアイデアは、申請者らが先に提案したSSMTA*アルゴリズムの拡張である。この方式は検索実行時に道路網距離をマテリアライズ化するものであり、2点間の移動コストを旅行時間で最適化したい場合にもそのまま適用可能なものである。これらの研究成果は、国際会議で発表済みであり、また現在ジャーナル論文への投稿準備を進めている。 次に、(2)に関しては、LBSで求められる検索の内、最も長い処理時間を要する旅行計画を対象として、そのsafe-regionの高速生成方式を提案した。旅行計画のように複雑な検索に対するsafe-region生成は申請者らの研究が初めての提案である。方式の基本は指定されたオブジェクトカテゴリーを経由する経路が全く一致する道路網上の領域をsafe-regionとして作成するものであるが、そのために拡張Voronoi領域を動的に高速生成するものである。本研究の成果は国際会議で公表するとともに、その国際会議からジャーナル論文に推薦され、ジャーナル論文としても刊行されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の研究計画に沿い研究を進め、当初予定した全ての課題において国際会議論文やジャーナル論文として採録、または投稿できる状態になっている。従って、研究計画がおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に基づき、以下の各項を実現する。(1)移動体と検索点が共に移動する際の効率的な移動体位置のモニタリング方式と検索方式を実現する。(2)検索コストが高い検索を対象として、推薦検索を高速に実行する方式を提案する。 まず、(1)に関しては、多数の移動体の現在位置を効率よく更新可能な空間索引構造が必要となる。固定した対象の索引構造としては、従来R木が広く用いられてきた。一方、常に位置が変わる移動体を対象とした索引構造としてはグリッドファイルが用いられてきた。このグリッドファイルでは、例えば基本的なkNN検索を実行する際にもR木で利用可能なMBRによる絞り込みを使えないことから、検索効率が低下する問題がある。一方、R木では移動体が位置を変えることに伴い空間分割とMBRの修正を必要とし、これが動的管理性能の低下につながっていた。本研究では4分木をベースとする移動体管理のための空間索引構造を提案し、他方式との比較を行う。 (2)に対しては、LBSで求められる検索の内最も長い処理時間を要する旅行計画を対象として、Top-k検索、Skyline検索の高速アルゴリズムを提案する。旅行計画ではレストランやガソリンスタンド、コンビニなど旅行途中で訪れる必要があるデータ点カテゴリーが指定されそれらのデータ点カテゴリーに含まれるオブジェクトから1つずつ選んで訪れる際の旅行時間や距離を最小化する経路を求める検索である。しかし、レストランの評判やガソリン価格が安いガソリンスタンドなど、途中で訪れるデータ点の評価を最大化するという条件が与えられたとき、Top-k検索などが有効となる。これらの提案検索を実用的な処理時間で実現する。
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次年度使用額が生じた理由 |
トナーなど計算機消耗品代として15万円を計上していたが、9万円余りの余剰が生じた。また、国際会議での研究成果発表の為の旅費として99万円余りを計上していたが、約4万円余りの余剰が生じた。一方、国際会議登録料として約10万円の超過が発生したが、その不足分を上記余剰で補った。結果として、3万円余りの未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
国際会議参加費など、研究成果発表の為の旅費の一部として使用する予定である。
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