本研究では,4K UHD動画像を対象として,主観画質を最大化する時空間レート制御法の確立と符号化器への応用を目的としている. 最終年度に当たる平成29年度は,前年度までに確立した時空間EMOSの推定法,およびEMOS最大化に基づく時空間レート制御法/符号化法をHEVC符号化器に実装し,複数の試験画像をEMOS最大化の下に定ビットレート符号化してその有効性を検証した.また,定ビットレート符号化ではシーン間の時空間アクティビティの変動に伴ってEMOSが大きく変動するため,可変ビットレートに基づく定EMOS符号化法,および申請者が過去に提案している画質平坦化法の適用について検討した.その結果,提案する時空間レート制御法/符号化法はシーンのアクティビティに応じて適切なフレームレートが選択されEMOS最大化が実現されること,また定EMOS符号化ではシーン間で必要となるビットレートが非現実的な変動を示すため,十分なバッファと遅延が確保可能な場合においては画質平坦化法が有効であることを確認した. 以上により,本研究の3年間において,4K UHD動画像に対する時空EMOS推定法の確立,EMOS最大化に基づく時空間レート制御法と符号化法の実現/実装と評価,画質平坦化法の適用による画質制御法の検討と確立,を目指した当初目標が達成された. 本研究の過程で,4K UHD動画像においてはフレームレート60[frame/s]では時間EMOSが大きく低下して十分な画質が得られない場合があることが明らかとなり,今後は240[frame/s]等の超高フレームレート動画像を対象として,時間アクティビティと必要なフレームレートとの関係について検討する必要があることが強く示唆された.
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