本研究では、イラスト画像の作画スタイルを局所的なブロック領域に対して抽出できる特徴量を開発した。この特徴量の中からスタイル識別に適した語彙を混合ガウス分布モデルに基づき選別し、その辞書を用いた Fisher Vector に基づく高次元の識別子を設計した。また、スタイルの識別性能を向上させるために、主成分分析に基づく次元削減と多様体学習を組み合わせた非線形の教師なし次元削減法を開発した。 スタイルに関連したラベルが付与されたクリップアートの画像群を用いて、本手法で開発された検索機構を平均適合率により評価した結果、本手法の識別子による検索精度は既存手法の精度を大きく上回る事が確認され、その成果は国内学会や国際会議での6種の受賞を通して高く評価された。 本研究で開発した手法により、大量画像に対して作画スタイルを特徴付けるメタデータを自動的に付与できるので、デザイン性の向上を目的とした検索、可視化、およびスタイルの転写等の様々な技術基盤として用いられる。その他の応用としては、イラスト作品画像のデザイン品質の自動評価等の機能に役立てることができる。 主観的な創作行為の産物である作画スタイルの定量化を外観印象の客観的な評価指標として利用すれば、感性と経験に頼ってきたコンテンツ品質の計測や評価、および改良等に役立てられる。さらに、イラスト画像の使用目的や抽象語や印象語との相関関係を抽出すれば、プレゼンテーション資料を作成する際に所望の印象を特徴づけるイラスト画像群を自動選別する機能等に活用できる。また、本手法は画像検索だけでなく、スタイルに関する特徴の変換や転写の技術に応用できる可能性があり、従来には無い感性に基づく直観的なイラスト編集の機能が実現される。
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