研究課題/領域番号 |
15K00167
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
安藤 英俊 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (50221742)
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研究分担者 |
鳥山 孝司 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (50313789)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | GPU / 多相流体シミュレーション / 数値計算 / 可視化 |
研究実績の概要 |
平成27年度は1.固気液多相流体シミュレーションのうち固体の表現方法と計算手法の再検討,2.GPU上での効率的な実装方法の開発,3.固気液多相流体シミュレーションの統一的な計算手法への対応の検討,4.分散可視化における動的負荷分散の導入,を行ってゆく計画であった. このうち1.は固体の変形に対応するための有限要素法の導入の検討と,固体専用の座標系を別途用いることによる数値計算上の誤差の累積の排除を行った.有限要素法の計算の中には比較的逐次性の高い処理があるため,この部分をCPU側で担当し,その間にGPUは別の並列度の高い計算に取り組むような実装の検討を行った.さらに熱流体解析へ発展させるための伝熱計算を導入した.これにより従来よく用いられていた温度と密度の線形近似ではなく,高精度な計算が可能となった.2.では小規模なGPUクラスタ構成でも大規模計算が可能となるように,限られた容量のGPUメモリだけでなくCPU側のメモリを活用する手法を導入し,計算中にデータを移動させることで演算装置を有効活用する手法を考案した. さらに3.については格子法をベースとして従来から開発を継続している手法を拡張することで,固気液多相の熱流体計算に統一的に対応可能であることを確認した.4.については分散レイトレーシング法をベースとしてフォトンマッピング法に拡張する手法を検討した.また動的負荷分散の効果的な実装方法も検討済みである.これをGPU上で高速に実行するためにNvidiaが提供しているOptiXライブラリでの実装を検討し,実装の目処がたった.これらの項目を既存の手法に拡張する形で導入し,シミュレーションを行い,正しく動作することが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基本的に計画していた項目については当初の予定通り,あるいは部分的には予定以上の成果を達成した.すでに基本的な部分は正しく稼働しており,さらなる機能追加や計算の高精度化が可能である.さらに固体同士,あるいは固体と流体の相互干渉のための衝突判定を高精度・高速・安定的に行うために,距離場を構築するためにレベルセット法を活用することとした.レベルセット法自体はすでに界面の法線の獲得や表面張力の計算などの目的で実装済みであり,それを活用することで効果的に衝突判定を行うことも可能となった.これらは学会で発表予定であり,今後の計算処理の拡張にも大いに役立つことが期待される.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度には27年度に開発された手法を実装し,GPUクラスタ内のノードにおいてCPUとGPUの連成を効率的に図り,さらにGPUクラスタ全体での効果的な計算手法を検討する.28年度にはCPUとの高速インタフェースを備えるGPUが登場するため,従来よりもCPU-GPUでの連携が効率的に実行可能になると期待されるが,この新しいインタフェースが比較的安価に入手可能となるか,あるいは一部の高価なシステム上に限定されるかは,安価なGPUクラスタ上で効率的な計算の実現を目指す本研究にも大きな影響を及ぼす.新製品のリリースを見届けてから来年度以降の計画の再検討が必要となる可能性もある. それとは独立に,CPU-GPUの連携を有限要素法と流体計算においては計算の分担の再検討を行いさらなる効率化を目指す.多相熱流体においては相変化を伴う現象への対応を検討する.多相流体の複雑な界面をわかりやすく可視化するために,一般的には奥行き方向に遮蔽が生じてしまう場合などに対応し,3D立体視の実装と評価を行う.
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