平成29年度は最終年度として今まで個別に設計・実装してきた手法を組み合わせ,全体的に効率的に固気液多相流環境での熱流体計算と可視化の実現に取り組んだ.まずGPU上での効率的な固体間の衝突判定処理を実現し,国内学会にて発表した.衝突判定処理としては固体の包含形状としてAABB(Axis Aligned Bounding Box)を使用し,CPU上およびGPU上での効率的な交差判定手法を実装して比較した. 多層熱流体解析において沸騰・融解・昇華などの相変化に対応する手法の開発と実装を行ったが,特に相変化を伴う計算には界面の正確な表現が必要であることが改めて確認された.このため単一GPUや小規模な分散計算では,小規模な物理現象のシミュレーションには十分対応可能であるものの,実用的に十分な大規模計算に対応することはメモリ容量的にも容易でないことが確認された.今後は適応型格子等の導入が重要となると考える.ただし将来的にはGPU側からCPU側の拡張可能で大容量なメモリにアクセスすることも技術的に可能になるとも見られるため,常に最新動向を把握した上で最適な技術的選択をしてゆく必要がある. さらにGPUを上でのフォトンマッピング法を熱の輻射計算として利用可能かどうか評価し,反射や屈折を伴う状況においても正確な輻射計算を可能とした.フォトンマッピング法は写実的可視化の手法としても有用であり,これによりGPUの強みである計算と可視化の高度な融合を実現した.
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