研究課題/領域番号 |
15K00177
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
伊東 拓 日本大学, 生産工学部, 助教 (80433853)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 電磁波伝搬シミュレーション / メッシュレス法 / MTDM / FDTD / Hybrid法 |
研究実績の概要 |
Meshless Time-Domain Method (MTDM) は,Finite-Difference Time-Domain method (FDTD) と比較して節点を柔軟に配置できるため,複雑領域での電磁波伝搬解析を比較的簡単に実現できるという利点を持っている.一方,MTDMの計算時間は,節点数が同程度の場合,FDTDと比較して大きくなる傾向がある.そのため,平成28年度は,複雑領域における電磁波伝搬解析をする際,全領域でMTDMを使うのではなく,FDTDと組み合わせて計算を行うHybrid法を提案した.具体的には,複雑領域であっても領域の一部に着目すれば矩形の領域が存在するため,矩形領域にFDTDを適用し,その他の領域でMTDMを使うことで,FDTDの高速性とMTDMの節点配置の柔軟性の両方を生かせる方法とした. Hybrid法をU字とS字の導波管に適用して電磁波伝搬解析を行った結果,両方の導波管において,MTDMとFDTDの結合部分を含めてElectric Fieldは滑らかに分布していた.また,シミュレーションは100万ステップ以上安定動作する例を確認した.さらに,MTDMを全領域で使用した場合と比較して,1万ステップあたりの計算時間は,U字・S字の導波管でそれぞれ最大1.9倍・1.5倍高速化された.加えて,比較的少ない節点数で,Hybrid法はFDTDよりも高精度であった.少ない節点数で十分な精度のシミュレーションができると,大規模問題を扱って並列計算が必要となったとき,同期のための転送データ量の減少につながる.そのため,今後並列計算を行う際にも,Hybrid法はデータ転送時間を抑えることに貢献する可能性がある.. 上述の研究成果は,学術論文としてアクセプトされた.また,上記研究成果を中心に,国際会議や国内学会・研究会等で,積極的に研究発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は,複雑領域で電磁波伝搬解析をするためのMTDMとFDTDによるHybrid法を提案し,MTDMのみを用いたときと比較して,シミュレーション速度を高速化することができた.並列計算による高速化に移る前にアルゴリズムを洗練させることは重要であり,今年度の成果は,今後につながるものであると考えている.なお,この研究成果は,学術論文としてアクセプトされている. 以上より,全体としておおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,3次元複雑領域での電磁波伝搬シミュレーションをMTDMあるいはHybrid法によって行い,その並列アルゴリズムを考案することを計画している.これまで我々は,平成27年度にInterpolating Moving Least-Squares method (IMLS) を組み込むことでMTDMの安定性を向上させ,平成28年度にFDTDとMTDMの利点を生かすHybrid法を提案してきた.一方,これらは基本的に2次元でシミュレーションを行ってきたため,まずは3次元での評価実験を行い,その後並列計算コードを実装することを考えている.現時点で,直線導波管において,2次元シミュレーション用並列アルゴリズムを提案しているものの,このアルゴリズムでは,節点が領域内に一様に分布していることを前提に高速化に成功しており,3次元複雑領域において節点分布に偏りが生じたとき,そのまま現在の並列アルゴリズムを適用することは難しい可能性がある.そのため,まずは3次元領域でも直線導波管で2次元のアルゴリズムを拡張する形で並列計算コードを実装し,その後複雑領域におけるコードの実装を目指す. 一方,複雑領域としてこれまで曲げのある導波管を主に対象とし,電磁波伝搬解析を行ってきたが,今後はその他の複雑領域についても解析対象とすることを考えている.具体的には,導波管の幅が入口と出口で異なるようなものについても対象とし,MTDMあるいはHybrid法の性能評価をするつもりである.
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次年度使用額が生じた理由 |
数値計算用ワークステーションの購入後に,残った研究費でワークステーションを強化するための増設メモリの購入を検討したが,十分な容量のものを購入するには研究費が足りず,平成29年度に購入する方が現実的であると判断したため.
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は,まず,平成28年度に購入した数値計算用ワークステーションを強化することを計画している.具体的には,十分な容量の増設メモリ(32GB × 4 を2セット,合計350,000円程度) の購入を考えている. 加えて,国際会議や国内での学会大会・研究会等への参加もそれぞれ2-3回程度を予定しており,その際の旅費(520,000円程度)に使用することを計画している.また,大学がライセンスを持っているMathematicaが快適に動作して論文執筆にも使えるデスクトップPC(400,000円程度)と,そのPCで使用するグラフ作成ソフト(40,000円程度)の購入も考えている.
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