研究課題/領域番号 |
15K00184
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
中西 功 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80243377)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | バイオメトリクス |
研究実績の概要 |
④特徴抽出法の検討 視覚閾下刺激ではP300に代表される事象関連電位(ERP)を常に確認することはできず,個人特徴とすることはできなかった.一方,閾下刺激を与えた場合,α波帯域のパワースペクトルが増大するといった知見があり,本研究でも同様な結果が得られた.そこで,パワースペクトルの変化を個人特徴とすることにした.被験者20名による認証性能の評価から,左脳の前頭前野と後頭部に位置する電極から得られる脳波について,刺激を与えない場合の脳波との差分を特徴量とした場合に高β波帯域で23~24%の低い誤差率が得られることが判明した.なお,閾下刺激はすべての被験者に共通なものであり,個人毎に特有なものにすることが課題として残る.聴覚閾下刺激においては,個人毎に思い出深い曲をあらかじめ選定し,そのハイレゾ音の超音波部分を抜き出し,10名の被験者に閾下刺激として提示した際の誘発脳波のスペクトルを用いて識別性能を評価したところ,視覚の場合と同様,左脳の前頭前野に位置する電極から得られたβ波帯域の脳波において,22%の低い誤差率が得られることが判明した. ⑤ERPデータベースの作成 閾下刺激の場合,常にERPが発生するとは限らないため,脳波スペクトルをデータベースとすることにした.視覚の場合,20名からそれぞれ10回,合計200個のデータベースを作成した.聴覚の場合,10名からそれぞれ10回,合計100個のデータベースを作成した段階である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
視覚の場合はまだ共通な刺激を用いている段階であり,聴覚の場合も被験者数が10名に留まったため,データベースの整備という点では遅れている.しかしながら,来年度に行う予定であった識別性能の予備評価を行っており,おおむね順調であると言える.
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今後の研究の推進方策 |
視覚の場合においても個人特有な刺激を導入し,より個人性が増した誘発脳波による認証精度の評価を行う.また,被験者数は40名を目指す.聴覚の場合は被験者数を現在の10名から40名に増やす.さらにいずれの場合も現在は識別方法としてユークリッド距離を用いているが,より識別性能の高い,サポートベクターマシンや他の学習型識別器の導入を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
3月で修了した院生の研究成果をまとめて国際会議へ投稿することにしたが,英文の校正が必要であり,投稿締め切りが4月中旬であったため,4月に入ってから校正依頼を行うことにしたため,校正費用に相当する額を次年度に繰り越した.
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次年度使用額の使用計画 |
3月末に原稿が完成し,業者に校正を依頼,4月初旬には校正結果を得た.すでに支払いは終えており,繰り越し分はほぼすでに使用した.
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