本研究では、モバイル端末に内蔵された複数センサ(タッチセンサや加速度センサなど)から、様々な使用状況下(タッチ操作時や歩行時など)での各ユーザの操作や行動の特徴を抽出し、継続的にマルチモーダル認証するシステムを目指す。当初の平成29年度の実施計画では、全センサを常時使用して統合するのではなく状況に応じてセンサを取捨選択するために、免疫型診断モデルを用いたセンサ統合マルチモーダル認証システムを開発してリアルタイムな認証実験を行う。 まずタッチ操作に対する28年度の研究では、被験者11名に対して半年間10回にわたるタッチ操作履歴を記録し、回数とともに個人識別率がどう変化するかを調べた結果、識別率の変化が実験や操作によって異なることを確認した。29年度にはこの研究成果をまとめ国際会議にて発表した。一方、加速度に基づく歩行識別に対する研究では、同一端末で歩行データを取得して個人を識別していたため、同じ被験者に対して異なる端末で歩行データを記録した場合について明らかでなかった。そこで29年度には、同一被験者に対して異なる3端末で個人識別を行い、識別率は端末によって大きな差があり、識別率を高く保つためには1秒間に十分なサンプルが必要であることを確認した。この成果を国内学会で発表した。そして、タッチ、加速度、ジャイロ、磁気コンパス、心拍、気圧、GPS、カメラ、マイクなどのセンサデータに加えて、端末やアプリの使用履歴データにも基づいた免疫型診断モデルを用いたセンサ統合マルチモーダル認証システムの設計仕様を固めた。
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