本研究の目的は、空間関係情報を含む文章である空間記述を読解する際の空間メンタルモデルに対する視点と空間参照枠の動的変化特性に関して、(1)心理学実験による検討を行い、(2)認知モデルを構築し、(3)この認知モデルに基づき、空間記述読解時の空間メンタルモデルに対する視点と空間参照枠の動的変化を逐次自動推定するシステムを開発することである。 2015年度は、研究目的(1)に関して、空間記述読解時の空間メンタルモデルに対する視点と空間参照枠の動態を検討する行動実験を行いつつ、空間記述文収集のためのwebサーベイを実施し、空間記述データを収集した。 2016年度は、研究目的(2)に掲げた認知モデル構築を主たる目的として研究を進めた。2015年度に収集した空間記述データの分析と、2016年度に実施した空間記述の理解と産出実験の結果から、空間認知能力に対するメタ認知特性、視点選好性、他者視点の配慮や共感性といった個人特性が、本研究の認知モデルでも重要な役割を果たすことが示唆された。そのため、これら個人特性を考慮しつつ、認知モデル構築を行った。 2017年度は、前年度までの実験・調査の結果、及びこれらに基づいて構築した認知モデルを参照しつつ、研究目的(3)に掲げたシステム開発を行い、プロトタイプとなるシステムを開発した。また、こうしたシステムの日常生活での応用可能性を探ることを目的として、スマホなどの携帯情報端末での地図情報利用時の言語による経路指示特性を、経路指示作成課題などを含むwebサーベイで検討した。 今後は、開発したプロトタイプシステムを基にして、推定状態の可視化などを含めたユーザビリティや、システムの推定精度向上のための実験・調査・改良を進めつつ、こうしたシステムの日常生活での応用事例を具体的に提案していく予定である。
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