研究課題
飼育下のチンパンジーを対象に、物を操作する行動を指標とした比較認知発達研究を継続しておこなった。物同士を組み合わせる定位操作の発達と、その発展形である道具使用行動に着目し、ヒトとチンパンジーだけでなく、他の大型類人猿も含めた形での認知発達過程の比較をおこなった。その結果、ヒトとチンパンジーの比較から得られたデータが、他の大型類人猿を含むヒト科全体に視野を広げることによって、より適切な形で再解釈できることがわかった。ヒトでは、「入れる」と「つむ」という定位操作がほぼ同じ1歳前後の時期に初出する。チンパンジーでは、「入れる」という定位操作がヒトと同様に1歳前から見られるものの、「つむ」という定位操作は2歳半から3歳で初出した。ヒトとチンパンジーのみを比較していたときには、チンパンジーにおいてヒトよりも積木をつむという定位操作が遅く出現すると解釈をしていた。チンパンジー以外の大型類人猿も比較対象に加えることで、大型類人猿全般で定位操作が初出する時期は3歳前後だったため、チンパンジーで特異的に棒を穴に入れるという定位操作の開始時期がヒトと同じレベルまで早まっていることが明らかになった。また、「入れる」という定位操作によって円形のカップを組み合わせて、入れ子状の階層性をもつ構造を作るという入れ子のカップ課題で、チンパンジーとヒトの直接比較をおこなった。チンパンジーとヒト幼児の操作行動を時系列にそって記述し、行為の文法的規則性の有無や、組み合わせの効率性について種間比較をおこなった。部品集積型と呼ばれる、階層性・再帰性のある組み合わせがチンパンジーとヒト幼児の双方で観察され、2-3歳のヒトの子どもでは、チンパンジーと同様に試行錯誤的で非効率的なカップの組み合わせの変遷が見られた。また、認知発達の基盤となる母子関係について、母親による育児の重要性を広く一般に伝える講演や執筆をおこなった。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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http://langint.pri.kyoto-u.ac.jp/langint/staff/misato_hayashi-j.html