研究課題
本研究課題は、脳機能画像法(機能的磁気共鳴画像法、fMRI)を用いて、エピソード記憶に関わる脳内機構の加齢変化を検討し、最終的には、正常加齢と病的加齢による変化の違いを明らかにすることを目的とする。本年度は、健常高齢者(65~79歳)および健常成人(20~29歳)を対象とした脳機能画像研究の実施に向けて、エピソード記憶課題(出来事に付随する時間や場所などの文脈情報に関する記憶を問う課題)の作成をおこなった。具体的には、生物および無生物の写真からなる学習リストを2つ用意し、研究参加者に写真を1枚ずつ呈示して、2択のボタン押しにて生物/無生物判断を求めた(偶発学習課題)。同様の手続きがそれぞれの学習リストで実施され、2つのリストの間には休憩時間をはさんだ。その後の想起課題では、2種類の写真ペア(一方は学習した2枚の写真から構成されたペア、もう一方は学習していない2枚の写真から構成されたペア)を用意した。研究参加者には、呈示された写真ペアの両方が学習した写真であった場合にのみ、より最近に学習したものを選択するように求めた(時間情報の想起課題)。先に述べたように、健常高齢者と健常成人を対象とした研究となるため、前者では天井効果、後者では床効果の影響が想定された。したがって複数回の予備的な行動実験を実施し、いずれの効果の影響も排除できるように、刺激数、呈示回数・時間、また遅延時間などの実験条件に修正を加えつつ、適切なエピソード記憶課題の完成を目指した。また予備実験と並行して、研究への参加希望者のプーリング作業も開始した。次年度以降は、脳機能画像研究の実施へと段階を進め、データ収集に取りかかる予定である。
3: やや遅れている
本年度は、健常高齢者および健常成人を対象とした脳機能画像研究に用いる、妥当性の高いエピソード記憶課題の作成を目指して予備的な行動実験を実施した。当初の研究計画では本年度中に脳機能画像研究を開始させる予定であったが、実験条件の修正およびその確定に想定以上の時間を要したため、次年度に開始予定となった。
本研究課題を推進する上で課題の一つとなるのは、研究参加者の確保である。健常高齢者および健常成人を対象とした脳機能画像研究については、本年度までで参加者募集の目処が立っているため、研究推進に問題は生じないものと思われる。次の研究段階として、健忘型軽度認知機能障害(aMCI)高齢者を対象として加える予定であるが、次年度中に参加基準を満たす参加者のリスト化を開始し、データ取得を円滑にできる体制を整える。また研究参加者群の追加に伴い、用いる記憶課題に再度修正が必要になるものと予想されるが、適切かつ迅速に対応する。
本年度中に開始予定であった脳機能画像研究が、次年度からの実施となった。したがって、脳機能画像研究の実施に伴い必要とされていた研究経費が次年度に持ち越されることとなった。
次年度の主な研究経費の使途は、刺激呈示・データ解析用パソコン(設備備品費)、研究参加者への謝金、MRI施設使用料、脳機能画像研究の実施、および、研究打ち合わせのための旅費などを予定している。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 図書 (1件)
Frontiers in Aging Neuroscience
巻: 7 ページ: -
10.3389/fnagi.2015.00186
Journal of the American Geriatrics Society
巻: 63 ページ: 1355-1363
10.1111/jgs.13481
Clinical Neuroscience
巻: 33 ページ: 498-500