研究課題
本研究は、脳機能画像法(機能的磁気共鳴画像法、以下、fMRI)を用いて、健常高齢者と健常若齢者のエピソード記憶施行中の脳活動を計測し、両群の行動成績および脳活動を比較することで、その認知的・脳的基盤の加齢変化を検討することを目的としたものである。最終的には、正常な加齢と病的な加齢に伴う変化の違いを明らかにすることを目指した。これまで健常高齢者と健常高齢者の両方に用いることができる、エピソード記憶課題(出来事に付随する時間や場所などの文脈情報を問う記憶課題)の作成を試み、刺激の数、刺激の呈示時間や呈示回数などを変数として行動実験をおこなった。その結果、条件を満たす文脈記憶課題をおおむね完成することができた。また別の実験では、健常高齢者において、前期高齢者と後期高齢者の2群に分け、fMRIを用いて作業記憶課題実施中の脳活動を測定し、それを群間で比較することで、健常高齢者の中でも、さらに加齢に従って行動成績および脳内機構の変化が確認されるかについて検討した。その結果、1)後期高齢者では前期高齢者と比較して行動成績が低下すること、2)後期高齢者では前期高齢者と比較して前頭前野の活動が増加していること、を明らかにした。さらに後期高齢者において、前頭前野の活動の強さと行動成績の良さが正の相関を示したことから、この前頭前野の活動が作業記憶課題の遂行に補償的な役割を担っている可能性について考察した。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Frontiers in Aging Neuroscience
巻: 10 ページ: -
10.3389/fnagi.2018.00358