研究課題/領域番号 |
15K00208
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
牧岡 省吾 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (60264785)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 共感覚 / 自己組織化学習 / モダリティ間マッピング / 多感覚統合 |
研究実績の概要 |
数や系列について考えると数字の空間的配置が強制的に喚起される共感覚SSS(spatial sequence synesthesia)において、配置の形状は個人間で異なり、またそれらの形状には規則性と不規則性の混交が見られる。一方、曜日や月名については、円環状の配置が見られる場合があることが知られている。このような円環状の配置が研究代表者の提案する枠組みSOLA(Self-Organizing Learning Account of number-forms)で説明可能かどうかをシミュレーションによって検討した。数字の大きさを反映する入力表現を用いた場合には、直線やジグザグ、折れ曲がった線などの配置がみられた。これは数に関する空間的配列共感覚と同様な配置であり、SSS保持者においてもみられる場合がある。系列の最初と最後が類似する入力表現を用いた場合には、円環状の配置がみられた。以上のシミュレーションより、SOLAの枠組みによって曜日や月名に関する共感覚の生成過程を説明可能であることが明らかになった。 加えて、性格印象と色の対応関係について、心理実験により予備的なデータを収集した。画面上に提示された色パッチに対する印象をBig Five性格尺度を用いて測定したところ、色と性格印象との対応関係は個人間で大きく異なっていた(課題1)。続いて、同一の参加者を対象に、Big Fiveのいずれかの性格次元に対応する形容詞のペアを画面上に提示し、2つの形容詞が性格次元上で同じ方向を向いているのかどうかを判断させ、反応時間を測定した(課題2)。その際、形容詞のフォント色が課題1で測定したその性格に対応する色と一致している条件と、矛楯している条件を比較した。反応時間に対する一致/不一致の効果は見られなかったため、実験方法について再検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
曜日や月名に関する共感覚について、SOLAに基づくシミュレーションを行い、共感覚者にみられるものと同様な空間配置を再現することができた。これにより本研究の目的の1つが達成されたと言える。一方、性格印象と色との対応関係については、当初予想していた反応時間に対する効果を見出すことができなかった。これが心理実験で用いた課題の起因するのか、それとも性格と色との対応関係が個人内においてもそれほど強固で無いためなのか、今後、検討を加える必要がある。以上のような進行状況であるため。概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
非共感覚者においてモダリティ間マッピングの自己組織化学習が広範に生じているという仮説を検証する。非共感覚者を対象に、曜日の音読潜時に対する空間的位置関係の影響を心理実験によって検討することにより、共感覚者と同様な曜日に関する円環状の空間配置が非共感覚者においてもみられるかどうかを検討する。もしそのような配置が見られるのであれば、非共感覚者においてモダリティ間の自己組織化学習が生じているという強力な証拠になる。この実験は本来平成27年度に行う予定であったが、卒業論文の指導等の都合により、平成28年度に実施することになった。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度においては学部学生の卒業研究の一環として心理実験を行ったため、人件費が生じなかった。また、シミュレーション用ソフトウェアの購入を見合わせ、一般的な言語開発環境でプログラミングを行ったため、物品費の支出が抑制された。
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次年度使用額の使用計画 |
心理実験で取得する音声データの分析に人件費を使用する。さらに、シミュレーションの高速化のためにGPUボードを購入する予定である。これらに加え、日本認知科学会における発表などのなために国内旅費を使用する。
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