心的空間における曜日の配置について検討するための新たな課題を考案し、実験を行った。これまでは音声反応を用いて曜日の前後判断における反応時間を取得していたが、キーボードを用いて様々な刺激配置における反応時間を安定して取得する方法を開発した。非共感覚者16名を対象とする実験の結果、次のような結果を得た。 ・様々な空間配置における反応時間分布の重心から推測される心的空間内の曜日の配置は個人ごとに異なっており、かつ多くの参加者で円環状や曲線状のような共感覚者と同様な形状がみられた。 ・月―火、火―水のような曜日の間隔が1日であるペアと、月―水のような間隔が日であるペアの配置を比較することにより、実験から得られた曜日の配置が単なるランダムウォークの結果ではないことを検証した。モンテカルロシミュレーションの結果、16人中8人の参加者では、配置の差が偶然に得られた確率が5%を下回ることを確認した。 ・同様に、2ヶ月以上の間隔を挟んで行った2回の実験の結果を個人内で比較した。2回の実験に参加した12名中9名の参加者において、1回目の配置と2回目の配置の間に有意な類似性がみられた。 ・曜日や数字などの系列に関する心理実験で確認されている距離効果(間隔が離れているペアの方が反応時間が短い)がすべての参加者で確認された。 これらの結果は、非共感覚者においても曜日の順序と空間の表象との間で自己組織化学習が生じていることを示唆しており、モダリティ間における自己組織化学習が生じているという仮説を支持する新たな証拠が得られたと言える。
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