研究課題/領域番号 |
15K00213
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
田中 吉史 金沢工業大学, 情報フロンティア学部, 教授 (90285073)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 創造的思考 / 芸術 / 絵画鑑賞 / 制約緩和 |
研究実績の概要 |
今年度は初年度に実施した実験室実験の追加データの収集と、美術館におけるフィールド実験を実施した。 実験室実験では、絵画鑑賞における写実性制約緩和に対する解説文の効果を検討した。美術初心者である大学生48人が2人一組で6点の絵画を鑑賞した。はじめに2点の絵画(具象画と抽象画)を観賞した後、絵画に描かれた対象物についての解説文(対象物解説文)、絵画の構図や形式的側面についての解説文(構図解説文)、解説文なしの3条件のいずれかで2点の絵画を鑑賞、その後、解説文なしで2点の絵画(具象画と抽象画)を鑑賞した。2点の具象画(ゴッホ「夜のカフェテラス」、シスレー「夏の風景」)に対する発話を比較した。ゴッホでは観賞が進むにつれて絵画の形式的側面への言及が増加するが、対象物解説文条件ではそれが遅れることが分かった。シスレーについては全体に事物の特定に集中する傾向があったが、対象物解説文条件では、事物間の関係性についての言及が少なく、個別の事物の特定に固執する傾向がより強かった。抽象画(カンディンスキーとモンドリアン)に関する分析から、解説文条件にかかわらず、抽象画においても描かれた事物を特定しようとする傾向が強いことが確認された。 フィールド実験は、当初最終年度に実施する計画であったが、協力先の都合により、今年度に実施することとなり、美術展「WEWANTOSEE 日本・ベルギー国際交流美術展in金沢」(金沢21世紀美術館、2016年9月28日~10月9日)で行われた。美術初心者の大学生30人が2人一組でこの美術展を観賞した。その際、解説文などの情報が与えられない条件、作品に関する作者による解説文を読みながら観賞する条件、作品についての質問を呈示しそれについて話し合いながら観賞する条件の3条件のうちどれかに割り当てられ、鑑賞時の会話データが収集された。現在この会話データの分析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度中に完了予定であった実験室実験は今年度に実施を完了した。当初の想定以上に多くの発話データが得られ、テキスト化には時間がかかっているが、書き起こし作業を外注することで、初年度よりも効率的に分析を進めることができた。また、その結果の一部について学会発表できる程度までまとめることができた。 また、当初3年目に実施予定であったフィールド実験を前倒しして実施した。こちらも想定していた以上の量の発話データを得ることができた。現在はそのテキスト化と分析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までに実施完了した実験室実験での発話データのテキスト化はほぼ完了したが、さらに分析を深めるため、発話と同時に見られた指さしなどのジェスチャーのコーディングについても、学生アルバイトの人数を増やすなどして効率的に進める。 また、フィールド実験で得られた発話データのテキスト化と分析についても、書き起こしを外部業者に委託することで一層の効率化を図る。 これらの分析から得られた結果をいくつかの学会にて発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
フィールド実験の実施に当たって、専門家からの協力と助言を受けたが、その謝金の支払いについて辞退の申し入れがあったこと、また発話データのテキスト化のための作業がやや遅れており、学生アルバイトによる分析作業が一部予定通り進行しなかったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度に引き続き、発話データのテキスト化を外部業者に発注する。また、研究成果を発表するための学会参加のための旅費、英文校閲費を支出する。また、これまでに行った実験結果を細くするための追加的な実験のため、実験参加者のための謝礼品の購入を行う。
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