研究課題/領域番号 |
15K00214
|
研究機関 | 京都学園大学 |
研究代表者 |
吉村 貴子 京都学園大学, 健康医療学部, 准教授 (40454673)
|
研究分担者 |
岩田 まな 滋慶医療科学大学院大学, 医療管理学研究科, 客員教授 (70146273)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 認知症 / 高齢者 / 介護者 / コミュニケーション / 拡大・代替法 / 認知機能 |
研究実績の概要 |
本研究は,コミュニケーションの観点から認知症高齢者の豊かさを追求するため,認知言語神経心理学的な視点で拡大・代替コミュニ ケーション方法(AAC)の包括的体系化を目指している。つまり,認知機能と伝わらない切ない心情といった心理面に着目した融合的介入方法を構築することが本研究の目的である。 平成29年度第1期において,前年度に収集した家族への質問紙調査(自己分析TEG,CADL家族質問紙(CADL-FQ),標準意欲評価(CAS),質問紙による意欲評価),ならびに介入前評価(会話に関する質問紙,Dementia Behavioral Disturbance scale (DBD))などに基づき,認知症高齢者と家族とのコミュニケーション状況を分析した。この結果は,前年度に得た認知特性に関する結果と合わせて,第2期の介入調査における家族に対するコミュニケーション指導に活用した。さらに,第2期の介入調査に必要となる,メモリブックに使用する写真やエピソードの収集に向けて,家族指導も行った。 平成29年度第2期では,介入調査として,介入群に対する介入を実施し,非介入群との比較調査も行った。具体的には,個別の家族指導,集団訓練におけるAACとしてのメモリブック作成,11週間の家庭でのAACとしてのメモリブックの使用訓練を行った。介入調査後には,効果測定として,家族へのアンケート調査(介入群,非介入群),談話評価(介入群のみ)を実施した。 平成29年度第3期では,一連の介入調査で得た結果を分析し,メモリブックのAACとして使用する訓練の有効性を検証し,訓練実施や使用における留意点などについて考察した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,認知症高齢者の豊かさをコミュニケーションの観点から追求するため,認知言語神経心理学的な視点でテイラーメイドな拡大・代替コミュニケーション方法(AAC)を包括的に体系化することを目指している。 平成29年度第1期において,これまで収集した認知症高齢者の言語機能や記憶などの認知神経心理学的結果と,家族など周囲の心理面の調査結果を融合させた。その結果,メモリブックをAACとしてとらえる視点を明確にすることができた。これにより,メモリブックの使用は一律ではなくなり,認知症高齢者の個々の認知特性や周囲の状態に応じた,テイラーメイドなAACを体系化できた考えた。なお,当初の予定にあった自閉症や吃音など他領域で使用される検査や知見を認知症高齢者へ応用する試みについては,本研究における認知症高齢者の認知特性と合致しづらい側面があることを認識した。この点の調整については,周囲の状態を客観的に把握する指標を加えることとし,自己分析TEGを実施した。その結果,周囲の心理特性をより多面的にとらえ,客観的な家族指導につなげることできた。 平成29年度第2期には,メモリブックをAACとして実現するための集団訓練のプロトコルを作成できたため,一般的な医療および介護現場においてもAACに関する集団訓練を実施できる方向性を築けた。また,作成したメモリブックを認知症高齢者と家族が,家庭において使用する訓練も実施した。これにより日常生活でAACを活用する上での,利点や問題点の抽出につながる基礎的情報を得ることができた。 平成29年度第3期には,今年度得た介入調査の結果を分析し,次年度に向けて考察した。 以上の結果に基づき,認知特性と本人と周囲の状態に応じたAACを考案し,その使用訓練を経て,日常生活への一般化を検証するとした当初計画は,おおむね順調に進展していると考えた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画として,平成30年度は一連の研究成果の集大成として,認知症高齢者における実践的な拡大・代替コミュニケーション(AAC)の訓練に関する知見をリーフレットなどとしてまとめる。 具体的には,認知症高齢者の認知特性や周囲の心理的特性を示し,各認知症高齢者の障害構造や周囲の状態に応じた方法を介護者や家族が選択でき,テイラーメイドなAACを日常でも実現できるよう解説する。 特に認知症高齢者とのコミュニケーションについては,認知特性や周囲の心理特性に応じた有効な方略を図解することも試みる予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
介入調査における介入訓練プロトコルに基づき,介入調査を効率的に実施できたため,旅費の一部が次年度使用額となったため。
|