研究課題/領域番号 |
15K00215
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
杉尾 武志 同志社大学, 文化情報学部, 教授 (60335205)
|
研究分担者 |
小川 健二 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (50586021)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 認知的制御 / 認知的柔軟性 / 図的表現の読解 / 大域的読解 / 反応抑制 |
研究実績の概要 |
特定の図的表現に対して目的に沿った形で読解を行うためには、認知的制御の働きにより競合する選択肢から最適な読解方略を選択することが必要となる。こうした認知的制御は、課題の安定した遂行に必要な情報を課題セットとして維持する帯状弁蓋系と試行ごとのエラーを修正する前頭頭頂系が相補的に機能することで実現されている。本年度、図的表現の柔軟な読解における認知的制御の役割について以下の点が明らかにされた: 1.読解方略(大域的・局所的)による認知的制御メカニズムの関与の違いについて、事象関連型fMRIによる検討を行った。課題切替パラダイムにより、参加者は表刺激に対する読解を先行する手がかり刺激が示す方略に沿って行い、手がかりに対する準備段階と読解の実行段階に分けて活動領域を検討した。その結果、大域的方略における準備段階で課題セットの活性化と維持を担う右の島皮質から前頭前野弁蓋部、局所的方略における準備段階で意味的制御を担う右中側頭回の活動が上昇することが示された。大域的読解において表刺激を構成する要素を目的に沿ってグループ化するためには、課題特異的な刺激と反応の対応関係を含めた複雑な課題セットを維持することが必要となるのに対して、表刺激の構成要素に対する習慣化された反応を適切に制御することが局所的読解においては求められる。このように、読解方略によって適切に制御過程の切替が行われていることが明らかとなった。 2.方略間で刺激と反応の連合のみ異なるように課題の修正を行い、抑制的制御の関与を明らかにするために方略間の反応競合の有無を要因として実験を行った。その結果、大域的読解時に、島皮質だけでなく反応抑制系(右下前頭回・前運動補足野)の活性化がみられた。このことは反応競合の有無に関わらず、大域的読解を行うためには、局所的要素に対する習慣化された反応を抑制する必要があることを示している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定通り図的表現の読解における抑制的制御の役割についてフランカー化課題における実験パラダイムをふまえたデザインで進めた結果、読解方略によって反応抑制システムの活動に違いがみられることを明らかにすることができた。反応抑制システムの活動がどの程度読解方略の違いに依存しているかについても追加実験を進めることができており,これらの実験から明らかになった部位を中心に実際に方略がどのように表象されているのかについて現在デコーディング実験を準備中である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後研究を推進していくために、実験の実施およびデータ分析に関しては大学院生を雇用して研究代表者および共同研究者は計画立案および実験準備に専念できる環境を整えていくこと行っていく。 研究を遂行する上で、反応抑制およびワーキングメモリに関して個人差をどのように測定するかということが大きな課題となっており、ワーキングメモリの個人差に関する専門的な知見を有する研究者(京都府立大学森下正修准教授)に助言を求めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
fMRI実験および視覚認知実験に関して当初予定していた回数および参加者数を確保できなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
前年度に引き続きfMRI実験に関する装置使用料および参加者に対する謝礼、視覚認知実験における参加者に対する謝礼、データ分析で雇用する大学院生に対する謝金として使用する予定である。
|