研究実績の概要 |
本研究の目的は、顔を識別するための神経基盤と考えられる、側頭葉ニューロンによる顔画像情報の時間的コーディングの神経機構を明らかにすることにある。時間的コーディングとは、サルの下側頭皮質(TE野)の神経発火に、顔の大まかな分類(サルかヒトか)が、より詳細な分類(個体や表情)より時間的に早くコーディングされている現象である。顔を逆さにするとTE野のニューロンがコードする大まかな分類情報の量は変化しないが、個体や表情の情報量は減る(Sugase-Miyamoto et al., 2014)。また、大まかな情報をコードするニューロンと顔の倒立に影響をうけるニューロンが異なることも示唆された。すなわち、大まかな情報と、倒立顔に影響を受ける詳細な情報は異なるニューロンで処理されることが示唆された。これらの結果は、主に、TE野前部の顔領域(前部顔領域)で得られた知見である。そこで、情報の時間的コーディングの神経機構を明らかにするため、前部顔領域とそれより後方に位置する情報の入力源(後部顔領域)を特定し、それら領域で情報の時間的コーディングの違いを調べる。詳細な情報は前部顔領域における処理により生じると仮定すると、詳細な情報は前部顔領域で主に観察され、他方、大まかな情報は前部および後部顔領域ともに観察できることが推測される。本年度は、TE野において複数の部位で神経細胞活動の同時記録を行うのに加え、TEO野においても神経細胞活動を記録した。
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