研究課題/領域番号 |
15K00222
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
西田 眞 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (70091816)
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研究分担者 |
景山 陽一 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (40292362)
石沢 千佳子 秋田大学, 理工学研究科, 講師 (00282161)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 人間計測 / ユーザインタフェース / 画像処理 / マルチイメージングシステム |
研究実績の概要 |
平成28年度は、情動が喚起された際の姿勢や頭部の動きの基礎的な解析、および近赤外データ取得における環境影響等に関する検討を行った。また、体調が心理状態に与える影響について基礎的検討、実験室レベルのプロトタイプを構築するために必要な口唇の動き特徴量抽出処理などの改善を行った。具体的な内容を以下にまとめる。 (1)マイクロソフトのKinectセンサを用いて情動喚起時の体動の3次元データを取得した。さらに、特別な情動が生起していない「平常」状態と「喜び」の情動が生じた場合との体動の相違について検討を加えた。(2)近赤外カメラを用いた特徴量取得における撮影条件設定、および周辺環境の影響に関して検討を加えた。(3)日常生活に支障のない程度の体調不調が生じているときの心理状態について、アンケートおよびAffectGridを用いた長期的調査を実施した。さらに、口唇の動き特徴も取得し、情動に起因しない口唇の動き特徴変動について検討を加えた。(4)本申請課題で着目している生体情報である「口唇の動き特徴」を精度良く抽出するための補正処理について検討を加えた。(5)サーモグラフィで取得した「喜び」の自然表情の温度変化を解析し、同様に取得した故意表情との比較を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は,①喜びの情動が喚起された時の体動をKinectセンサで取得し、5つの骨格データ(頭、首、左肩、肩中央、右肩)を対象に平常状態と「喜び」状態との相違を調査した。両状態データを同フレーム数抽出し比較した結果、情動喚起時には各骨格の変位量が増加する傾向にあることを認めた。さらにこの変位量に着目し、決定木、AdaBoost、SVM、ランダムフォレスト、線形回帰、ニューラルネットワークの6種類の手法を用いて平常と「喜び」データの判別を試みた。その結果、ランダムフォレストまたはAdaBoostにより両状態の判別が可能であることを明らかにした。②近赤外データの輝度値ヒストグラムを安定的に取得するため、本研究の条件下(近赤外感度CMOSセンサ、近赤外帯域フィルタ、通常ブラインド)における周辺環境の影響を調査した。その結果、日射量変動の影響が比較的大きいことを認めた。③被験者3名を対象に3か月間に渡り、アンケートとAffectGridによる心理・体調状態調査を行った。なお、被験者の心身の負担を考慮し、日常生活に支障のない程度の不調のみを対象として休日を除き実施した。その結果、微小な体調不調の時には、AffectGridの評価値が「抑うつ」を示す方向に推移することを明らかにした。また、体調良好時と体調不調時では口唇横方向の動きに微小な差異の現れることを明らかにした。④口唇周辺に陰影が生じた場合、従来の口唇抽出手法では口唇領域を過剰に抽出しやすい。そこで、口唇領域の過剰抽出データを対象に、軽く口を閉じた時の口唇の厚さを基準とした補正手法を開発した。⑤サーモグラフィを用いて取得した「喜び」の自然表情・故意表情データを解析し、表情の変化に伴い両頬の温度分布が変化することを明らかにした。また、自然表情と比較し故意表情は時系列的な温度変化の分散値が小さいことを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、平成27-28年度の実施結果を踏まえ、各センサ情報(体動の3次元情報、近赤外画像データ、可視画像データ、顔の温度情報等)からQOL判定に有用な特徴量を選定し、特徴量のファジィ数化を試みる。また、世代を考慮した感情強度の調査および特徴量の変動について検討を加える。 QOL認識マルチイメージングシステムを構築し、複数の被験者(世代を考慮)の同時計測と情動喚起の有無の判定を試みる。その結果を随時フィードバックし、処理の改良とシステムの最適化を進め、個人固有のQOL認識マルチイメージングシステムを構築する。
なお、本研究で用いるデータは研究の全期間を通し「秋田大学手形地区におけるヒトを対象とした研究に関する倫理規定第6条第2項」に基づいて倫理審査の申請を行い、承認を得た研究計画の下、被験者本人の了承を得て取得する。また、得られた成果は関連学会の論文誌や国際シンポジウム、研究会等において積極的に公表していく予定であり、その過程で得られた成果は速やかに以後の検討にフィードバックさせる。
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