研究課題/領域番号 |
15K00231
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
宮島 千代美 名古屋大学, 未来社会創造機構, 特任准教授 (90335092)
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研究分担者 |
武田 一哉 名古屋大学, 情報科学研究科, 教授 (20273295)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ドライバ / 視行動 / 運転行動 / 運転データ / 危険状態推定 |
研究実績の概要 |
28年度は,ドライバの視線配分の適切度を評価する手法について検討した.まず,ドライバが周囲の各方向をどの程度注視しているかを定量化した.自車を中心に,前方,左前,右前方,左側方,右側方,後方,左後方,右後方の8領域に視線配分領域を分割し,視線の方向や単位時間当たりの領域停留時間等から,ドライバの各領域の注視度を算出した.ここで,ドライバの周辺視野について考慮するため,例えばドライバの視線が正面に向いている場合,正面のみを見ているのではなく,その両側の右前・左前にもそれぞれ2割程度の視線配分がされているものとみなし,注視度を算出する方法を採用した,また,ドライバが視線の方向を変化させてから実際に視線先の領域を認識できるまでにかかる時間についても考慮するため,注視度に指数関数を用いた時定数を畳み込む方法を採用した.次に,各領域に存在する最も近い周辺車両と自車とのTTCの値を求め,その値に基づいて各領域の領域危険度を算出した.ここで,特に注視すべき周辺車両は,この先数秒後に自車に接近して危険となる可能性のある車両であると考え,3秒後のTTCに基づき危険度を算出した.最後に,領域注視度と領域危険度の相関から視線配分適切度を算出した.27年度にタグ付けを行った自動車学校の教習員と一般のドライバの高速道路における運転データを用いて,領域注視度と領域危険度を算出し,ドライバごとの視線配分の適切どを比較した.その結果,一般ドライバの平均の相関が0.35,自動車学校の教習員の相関の平均は0.40であった.このことから,一般ドライバに比較し教習員の方が,危険な周辺領域をより適切に注視する傾向にあることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の計画に従い,ドライバの周囲注視度や周辺車両の危険度を定量化し,領域注視度と領域危険度の相関から視線配分適切度を算出した.以上のことから,本研究はおおむね順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は,ドライバの視行動と運転行動を離散的なイベントの時系列のマルチストリームとして表現し,安全な運転と危険な運転をモデル化する方法について検討する.ここでは,車線変更時の運転行動に着目する.ドライバの視線方向に基づき,視行動を「正面を見る」「右ミラーで右後方車を確認する」「スピードメータを見る」などの離散的な視行動イベントの時系列として表現でする.また,運転行動については,車両挙動・操作信号をクラスタリングすることで,「ブレーキを踏む」「アクセルを弱く踏み込む」「右方向へ素早く移動する」等の離散イベントの時系列として表現する.隠れマルコフモデルでこれらの離散イベントの時系列をモデル化すれば,あるドライバの車線変更時の行動パターンを統計的に表現することが可能であると考えられる.危険度のground-truthを基に,安全・危険な運転行動のモデルを構築し,学習後のパラメータを比較することでモデルの表現力を評価する. 次に,視行動適切度や,隠れマルコフモデルによる視行動・運転行動の統合モデルに基づき,危険な運転状態を検出する手法について検討する.隠れマルコフモデルでは,危険な運転モデルと安全な運転モデルを構築し,それらの尤度差から危険度を算出する.また,危険な運転の学習データを十分に得ることが難しい場合には,理想的な運転行動のモデルを構築し,そのモデルからの乖離度によって危険状況を推定する手法についても検討する.検出の結果をground-truthと比較し,閾値を変化させてAUCを求め評価する.検出に用いる特徴量の違いや,右車線変更と左車線変更において重要となる特徴量の分析,ドライバのカテゴリと危険度の関係についても調査する.
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定のPCの発注時期を,納入時期の関係で4月に見送ったため.
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次年度使用額の使用計画 |
発注を見送ったPCは4月に発注する.また,最終年度は主に研究成果の発表等,アウトリーチ活動に予算を活用する予定である.
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