ドライバの運転中の視行動と運転操作行動をそれぞれ離散的なイベントの時系列として表現した.ドライバの視線方向については,視線方向に基づき「右ミラーで右後方車を確認する」「スピードメータを見る」などの離散的な視行動イベントの時系列として表した.一方,運転操作行動については,車両挙動・操作信号をクラスタリングし,「アクセルを弱く踏み込む」「右方向へ素早く移動する」等の離散イベントの時系列として表した.隠れマルコフモデルを用いてこの離散イベントの時系列をモデル化し,ドライバの車線変更時の行動パターンを統計的に表現した.10名の評価者が車線変更中の映像を観察してレーティングした危険度を分布を考慮して正規化し平均化したground-truthを基に,安全・危険な車線変更行動のモデルをそれぞれ構築し,学習後のパラメータを比較した結果,安全な車線変更のモデルについては,繰り返し周囲を確認する視行動の特徴や,緩やかに加速度が変化するの特徴が見られた.一方,危険な車線変更のモデルについては,繰り返しの周囲確認行動の特徴ははっきりと見ることができず,急な前後左右の加速度変化がパラメータの特徴として表れた.次に,視行動・運転行動の統合モデルに基づき,危険な運転状態を検出する手法について検討した.危険行動モデルと安全行動モデルに対する尤度比を危険度と定義し,危険な車線変更を検出した結果,クロスバリデーションによる評価において,9割以上のAUCを得た.また,左右どちらの車線変更についても,視線と運転行動の統合モデルを用いた場合の方が,視線情報のみ,運転行動情報のみを用いた場合より,高い検出精度が得られることを確認した.
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