研究課題/領域番号 |
15K00256
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
梶川 嘉延 関西大学, システム理工学部, 教授 (30268312)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | サイレントスポット生成技術 / アクティブノイズコントロール / 能動騒音制御 / 工場騒音 / バーチャルセンシング / FPGA |
研究実績の概要 |
サイレントスポット生成技術に関して,今年度は工場内騒音に着目して検討を進めた.工場内騒音に対する対策としてサイレントスポットを作業者の両耳付近に生成する2つの方法について検討した. 工場内騒音は広帯域な騒音であるため,フィードフォワード型の制御方法が適している.この制御方法では,参照マイクロホン地点の騒音と誤差マイクロホン地点の騒音の相関を保つことがじゅうようなため,マイクロホン間の距離を近づけることが好ましい.そのためには,システム全体の処理遅延を減らす必要がある.もし,以上のことが実現できれば,ヘッドマウント型のサイレントスポット生成システムの実現が可能となる.そこで,処理速度が高速で高いサンプリング周波数で処理が可能なFPGAでの実装を行った.結果としてマイクロホン間距離を5cm程度にしたコンパクトなヘッドマウント型サイレントスポット生成システムの製作に成功し,騒音低減も十分に行えることが実際の工場内における実験を通じて実証された. 一方,工場内では椅子に座って作業を行うことがあるため,ヘッドレスト型のサイレントスポット生成システムも考えられる.ヘッドレスト型とは,椅子のヘッドレスト部に制御音源および誤差マイクロホンを配置し,椅子に座っている人の両耳付近にサイレントスポットを生成するシステムである.これによって,作業者は自然な状態で静かな音環境を享受することができる.しかし,そのようなシステムを構築するには騒音低減が行われる誤差マイクロホン地点を作業者の耳付近に設置しなければならないが,実際にはヘッドレスト部にマイクロホンは内蔵されるため,所望の場所にサイレントスポットを生成できない.そこで,バーチャルセンシング技術を新たに開発するとともに,それをヘッドレストシステムに導入して,実際の工場内において実験を行った.その結果,十分な騒音低減を両耳付近で達成することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サイレントスポットを生成技術でキーとなるバーチャルセンシング技術およびFPGAによる高速演算技術を確立し,実際の環境において十分な騒音低減(サイレントスポットの生成)が行えることが実証された.バーチャルセンシング技術についてはさまざまな手法がこれまで提案されているが,それらに比べて環境変化にロバストな新しい枠組みを提案することができ,その有効性をシミュレーションならびにフィールド実験を通じて実証することができた.また,FPGAによる高速演算技術を利用して非常にコンパクトなヘッドマウント型のサイレントスポットシステムを構築することにも成功し,その有効性をフィールド実験を通じて実証できた.以上のことから,本研究課題を当初の計画通りに進めることができたといえる.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度はこれまで得られた成果を更に進展させることを考えている.具体的には,FPGAによる高速演算に適した制御方式やアルゴリズムを新たに開発することを考えている.また,開発したバーチャルセンシング技術をより深化させるために,マルチチャンネル制御への適用や新たなアプリケーションの導入などを検討する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
前々年度の未使用額が多かったため,今年度の執行において最終的に少額であったか未使用額が残った.
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次年度使用額の使用計画 |
未使用額の92.828円を平成29年度配分額における旅費に参入して,成果発表での旅費に利用する予定である.平成29年度配分額は,最終年度のため主に成果発表のための旅費に利用することを考えている。その他,実験に必要な消耗品の購入や論文の掲載料,英文校閲料に利用する予定である。また,海外から関連研究者を招へいし,本プロジェクトの成果について客観的な意見をもらうことも検討している。
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