多視点ライトフィールド画像の実時間符号化を達成するため,平成27年度の後半より,符号化・復号化の枠組みを国際標準方式と異なる,分散圧縮符号化に変更した.分散圧縮符号化の符号化処理は,単にカメラで得られた映像信号に低ランクのランダム行列を乗じるだけである.一方,復号化側では時間軸あるいは視差間に存在する画像の冗長性を活用し,原画像を推定する.つまり,計算負荷を撮像装置からクラウド上のサーバーで処理する復号側に移行できるため,本課題達成のみならず,IoT(Internet of Things)の実現にも寄与すると思われる. 分散圧縮符号化は,圧縮センシングと分散符号化の理論を背景としており,前者はランダム行列で低次元化されたデータから原信号を推定する凸最適化問題として定式化される.原画像の推定精度を向上させるには,原信号をスパースに表現する辞書の設計が肝要である.平成29年度は辞書設計として一般に用いられているK-SVDと,前年度から実施してきた凸最適化の解法であるADMM(Alternating Direction Method for Multipliers)を比較した.提案法は僅かなPSNRの低下で計算速度を約2.5倍に高速化できた.後者の分散符号化では,復号化済みの画像を用いて復号化側で着目画像を高精度に推定する必要がある.平成29年度は,前年度までブロック・マッチングを基本としたフレーム間補間を利用していたが,TV-L1オプティカル・フローの採用により,高速化と画像復元の高精度化を両立できた.また,多視点画像のエピポーラ幾何における基礎行列を高精度に推定する方法,動き補償や視差補償に用いられるLIC(Local Intensity Compensation)をADMMで高精度化することができた.
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