平成30年度では、任意の特徴ベクトルに対して、より判別力を高める変換手法に関する研究を行った。一般に教師あり学習の枠組みでは、特徴ベクトルとして表現される各学習サンプルに対してそのサンプルが属するクラスラベルが与えられている。ある一つのサンプルに注目すると、学習サンプル群は当該サンプルの属するクラスとそれ以外といった2カテゴリーに分類でき、ここでは「それ以外」カテゴリーとの差異を強調する形で当該特徴ベクトルを変換する。「それ以外」との差異を考えることにより、当該クラス特有の特徴を強調することができる。この差異は特徴空間内の2カテゴリー識別器により表現され、その識別器の最適化はExemplar SVMへと帰着されることを示した。これにより、Exemplar SVMの識別器(識別面への法線ベクトル)そのものが変換先の特徴ベクトルとして採用可能であることも明らかとなった。パターン識別問題では、識別対象としてクラスが未知のテストサンプルを扱うが、上記変換法をテストサンプルに適用するには、(変換のための)「擬似」クラスが必要となる。ここでは上記Exemplar SVMのサポートベクトルのクラス分布を利用する「擬似」クラス推定手法も定式化した。これによりExemplar SVMを活用した新たな特徴ベクトル変換手法を構築した。本提案手法は扱う特徴量について特別な仮定を置かず、識別問題における一般の特徴ベクトルを対象としているため、これまでに取り組んできた様々な特徴変換手法と組み合わせることが可能となる。それら手法と本手法を組み合わせることで、画像認識課題における識別性能が改善可能であることを実験を通して定量的に示した。
|