研究課題/領域番号 |
15K00269
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
堀口 由貴男 京都大学, 工学研究科, 助教 (50362455)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 可聴化 / 聴覚表示 / パラメータマッピング / 複合表示 / 周波数変調合成 |
研究実績の概要 |
平成28年度は,音色をパラメトリックに変更できる周波数変調合成(Frequency Modulation Synthesis; FM合成)を利用した多次元データの可聴化の効果的な設計について調査した.FM合成では音の合成に2つの発振器(CarrierとModulator)が用いられ,それらの周波数の比(Carrier/Modulator周波数比; C/M比)とモジュレーションインデックス(Modulation Index; Modulator振幅とCarrier周波数の比)が音色を変化させるパラメータである.複数の変量を同時に監視してシステムの状態を制御する作業において,それらの変量が目標値に達していることの判断や目標状態達成のための操作のガイドとなる情報を可聴化によって提供することを目的とした場合,異なる変量の区別と目標値を基準とした各変量の正負と大きさの知覚が可能なように可聴化音を設計する必要がある.平成28年度の研究では,FM合成器を複合して正負をもつ複数の変量を音で表現するパラメータマッピング可聴化の設計について実験調査した.2次元補償トラッキングタスクを用いた実験調査の結果,モジュレーションインデックスを変量の区別に,C/M比を正負に対応づけるマッピング方法が効果的であることが確認された.さらに,そのようなマッピングにおいて,高いCarrier周波数に対して大きい値のインデックスを,低いCarrier周波数に対して小さい値のインデックスを設定することがより効果的であることが確認された.このようなパラメータ設定の組合せは,区別されなければならない要素音間で周波数スペクトルの分布形状を差別化する.音量と音色の操作を利用した多次元データ可聴化の設計制約が一連の調査により明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実施計画に対して,可聴化方法のカタログ化において分類の基準とする変量間の基本的な関係の整理作業に遅れが生じている.これまでに実施した実験調査と実施中の実験調査の結果を可聴化対象の特性の観点から俯瞰し整理する必要がある.個々の実験調査は着実に実施されている.
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今後の研究の推進方策 |
単に各変量が目標値に一致すればよいのではなく,目標状態への近づき方に関して制約が存在する場合に,その情報をどのようにして可聴化で伝達することが効果的かを実験により調査する.一連の調査を通じて,作業領域の制約を考慮しながらシステムの状態を表現する生態学的インタフェースの聴覚版を構成する表示設計の基本要素を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験調査の実施に係る人件費・謝金の費用が当初の計画よりも少額で済んだため.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の実験調査の実施数を増やしその費用に充てる.また,研究成果をまとめるのに必要な費用に充てる.
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