研究課題/領域番号 |
15K00270
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
酒田 信親 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (40452411)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 拡張身体表現 / 拡張現実感 / HMD / AR / Remote collaboration / Diminished Reality |
研究実績の概要 |
本研究では、身振りや手振り自体の身体表現を拡張する基本概念を導入することで、通常の人間以上の表現力を持つ遠隔協調作業の提案と実現を目指す。まず、プロジェクタと深度センサや光学トラッカで構成された身体表現を抽出し拡張する指示者側システムを構築する。そして、この全身の身体表現を抽出し拡大縮小表現・各種VFXによって表現を拡張するシステムと、HMD+HMCで構成された現場の作業者が用いるシステムを接続し、ユーザビリティテストによる効果測定を実施する。次に、身体表現を抽出し拡張する指示者側システムを、センサルームの導入と高解像度HMDを用いて没入型へと発展させる。そして、拡張身体表現によって通常の人間以上の表現力を持った遠隔協調作業での利点と限界を明らかにする。
平成28年度の研究実績として、平成27年度で構築した「仮想身体サイズによる対人距離の視覚的拡張」を実現したシステムに対し機能追加による改良を施し、効果測定を行った。具体的には、いままでは単眼映像の提供であったが、ステレオ映像を提供し、両眼立体視を実現したシステムとなった。予定では、拡大縮小表現に加え、VFXによる拡張表現でHMD内の人間の身体表現を強調したり、身体運動低速再現によってHMD内の人間が慎重に行動するような拡張表現の実装を予定していたが、予定外にステレオ視の実装が困難であったため、平成29年度での実装になることとなった。しかしながら両眼立体視の機能の提供により、複雑な形状の物体に対しても立体的な指示者による三次元的な指示の提供の可能性を実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の研究実績として、平成27年度で構築した「仮想身体サイズによる対人距離の視覚的拡張」を実現したシステムを改良し、効果測定を行った。具体的には、いままでは単眼映像の提供であったが、ステレオ映像を提供し、両眼立体視を実現したシステムとなった。予定では、拡大縮小表現に加え、VFXによる拡張表現でHMD内の人間の身体表現を強調したり、低速再現によってHMD内の人間が慎重に行動するような拡張表現の実装を予定していたが、予定外にステレオ視の実装が困難であったため、平成29年度での実装になることとなった。具体的にはステレオ立体視を行うための光学系ハードウェア制作の際の、工作精度不足によるものが大きい。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度では、前年度で未実装であった、VFXによる拡張身体表現を実装する予定である。具体的には、平成28年度で実装した三次元空間を自由に移動可能な指示者没入型の拡張身体表現を有する遠隔協調作業システムの評価を行うために、ユーザビリティテストを行う。また、拡張身体表現を導入した遠隔協調作業で、人間の認知にどの程度の影響を与えたかの調査も加えて行う。提案するシステムでは、重機に対する遠隔協調作業の可能性の提示を研究の一つの目標としているので、元来の人間ではあり得ない身体の大きさや小ささ、多様な表現を用いて遠隔協調作業を行うので、指示者・作業者(装着者・閲覧者)が感じる違和感を調べる。拡張現実空間に没入した場合に、現実世界と仮想世界のスケールの違いを考慮し、より作業や閲覧や会話をスムースに行えるような視覚的効果や効果音または音声の再生方法を目指す。例えば、身体の拡大率・縮小率に従って音声の帯域を変化させることで、作業者がおおよその拡大率を音声で判断できたり、指示者自身の発声の帯域変化よって身体の拡大縮小率を変化させることも考えている。そして、拡張身体表現を有する遠隔協調作業システムの利点と限界を明らかにする。くわえて、これまでの成果を整理し対外的な発表を前年度に比べ多く行う予定である。
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